「おい、そこで隠れている者、姿を現せ!」
馬上から呼びかけると、商人風の赤髪の男が一人、木陰から姿を現した。
「すまない、怖がらせるつもりはなかったんだ」
髪だけでなく瞳まで赤いその男は、両手を挙げて敵意がないことを示しながらこう言った。
「この山道を使うということは、君もタシュアに行くんだろう?よかったら、道中を共にしてもいいかな」
「唐突だな。私は得体の知れない男と山歩きを楽しみに来たわけではないが」
「まあまあ、美人の怖い顔は嫌いじゃないが、そう警戒しないでくれよ。これでも俺は、ウェスティリアではそこそこ名の知れた商人なんだぜ?」