【新連載】鷲巣の亡霊、帝愛を征く 第1話

使用したAI ChatGPT
全15話予定です。

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第1話「悪魔、船に現る」

 ギャンブルの舞台は、東京湾を進む巨大なクルーズ船――帝愛グループが裏で仕切る、地獄の遊覧船。
 乗せられたのは、借金を背負った数十人の男たち。ルールは単純、だが冷酷無比なゲーム――限定ジャンケン。勝てば希望、負ければ“地下”への片道切符。

 その中に、一人の“異物”がいた。

 白髪交じりの短髪、薄ら笑いを浮かべ、群れから外れて壁にもたれかかっている男。
 その姿に、他の参加者たちは軽い不快感を覚えていた。
 名前も知らない。声もかけづらい。空気が異様だった。

 だがその男――アカギは、冷静に場を観察していた。

 

 限定ジャンケンというゲーム。
 30枚のカード、3種の手。全員が同じ枚数を持ち、使い切るか3勝すれば“勝ち抜け”。
 だが、これは単なるジャンケンではない。
 手札が限られている以上、「何を切るか」ではなく「何を残すか」が勝負を分ける。

 普通の参加者は、まず“グー・チョキ・パー”のバランスを保ちつつ、人を信じ、手を読み、妥協し、組む。
 だがアカギは違った。

 彼は、「ゲームを攻略する」つもりなど毛頭なかった。
 狙っていたのは、人間そのものだ。

 

「……さて。試してみるか」

 アカギが最初に向かったのは、真面目そうな眼鏡の男と、気の弱そうな青年のコンビ。
 二人は既にペアで何戦か終えていたようで、互いに警戒し合いながらも、取引を繰り返していた。

「よう、俺ともやってみないか」

 唐突に話しかけたアカギに、男たちは驚いた表情を見せた。

「え、あ、あなたもまだ……残ってたんですか? カード……」

「残ってるさ。結構な枚数な」

 そう言ってアカギが見せた手札は、“チョキ10、グー10、パー10”。

 ――フルセット。

 周囲が少しざわつく。普通、誰かと何戦かやれば、何かしらの手は偏るはずだ。
 だがアカギは、まだ一度も勝負していなかった。

 この事実が、彼の異質さを際立たせる。

「ちょ、ちょっと待ってください。そんなに残ってるなんて……どうして今まで……?」

「様子を見ていた。人間ってやつをな」

 その瞬間、眼鏡の男がピクリと反応する。

「……あなた、本当に勝つ気あるんですか?」

「いや、ないさ」

 アカギはにやりと笑った。

「“勝ちに行く”ってのは、“損を嫌がる”奴がやることだろ? 俺は違う。“死にたくない”奴と遊びたいだけだ」

 

 その言葉に、場が一瞬、凍りついた。
 アカギはカードを抜き、パーを1枚差し出す。

「さぁ、始めようぜ。お前らが守りたいものが何か、見せてくれよ」



 その後の10分間。
 “彼”と対峙した男たちは、戦慄する。

 アカギは、勝ちを追わない。だが、相手が勝ちを捨てるよう仕向ける。
 “勝たなきゃ”という焦り、“負けたくない”という恐怖を、ただ一言の言葉で突き崩していく。

 彼の手札は削れない。
 代わりに削られていくのは――心だった。

 

 まるで悪魔が、船に紛れ込んだかのようだった。
 この男は、命を懸けたギャンブルに慣れすぎている。
 いや、それを“遊び”としか思っていない。

 その名を知る者はまだいない。
 だが、やがて全員が知ることになる。

 この“限定ジャンケン”というゲームは――
 “アカギ”という男の登場で、別のゲームへと姿を変え始めるのだ。

呪文

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