新シリーズ 「紅炎の神託(The Crimson Prophecy)」
【物語概要】
赤い溶岩に覆われた火山地帯「ヴォルカナール王国」
この国は赤い溶岩に覆われた火山地帯に築かれた。国中に広がる炎の大地は、
人々に豊かな鉱物資源をもたらす一方、突然の噴火が恐怖をもたらす。
この火山には「紅の神」が宿ると言われ、彼の怒りを鎮める方法をめぐって王族や貴族、反乱軍が対立している。
【紅炎の神託】 (こうえんのしんたく)
ヴォルカナール王国の空は、日ごと赤みを増していた。噴煙が渦を巻き、火山は絶え間なく地響きを上げる。最初は山麓の小村が、次いで城下町が溶岩流に呑まれた。王国全土が危機に瀕する中、王宮では女王エレーナが緊急会議を続けていた。
その中心に立つのは神託者リディア
彼女の赤い瞳は王宮の誰もが恐れる神聖な力の象徴だった。リディアは長い金の髪を背に流し、神々の声を聞くためにその身を捧げた特別な存在である。幼い頃から聖域で育てられ、世俗を超えた威厳を漂わせる彼女の一言は、王国の未来を左右する力を持っていた。
「紅の神を鎮めるには、神殿に封印された秘宝が必要です。しかし、それを手にするには試練を越えなければなりません。」
リディアの言葉に対し、玉座に座るエレーナはわずかに眉をひそめた。女王は黒いドレスをまとい、手には赤いルビーの指輪が輝いていた。その指が玉座の縁を冷たく叩く。
「試練とは何ですか?」
リディアは答えなかった。ただその瞳に、深い迷いと覚悟の色を宿していた。
数日後、探検隊が編成された。神託者リディアを中心に、冒険家のセレナ、錬金術師のソフィア、そして王国軍の護衛隊が加わった。各々が豪華でありながら機能的な衣装を身にまとい、火山地帯を進む姿は、さながら壮麗な行進のようであった。
旅路は過酷だった。溶岩が地面を焼き尽くし、毒々しい硫黄の匂いが空気を満たしている。
セレナは先導役を務め、素早い動きで危険な道を選別した。彼女は赤いハットを被り、華麗な舞のように足を踏み出すたびに、周囲の緊張を和らげた。一方、ソフィアは錬金術の知識を駆使して、道を切り開くための爆薬を調合したり、毒ガスを無効化する装置を用意したりしていた。
彼らが目指したのは、火山の中腹に佇む「紅の神の神殿」だった。
その神殿は古代の神々が築いたと言われる場所であり、長い年月を経て忘れられていた。その入り口に到達したとき、一行は思わず息を飲んだ。赤黒い岩肌に刻まれた門には、奇妙な古代文字が並び、まるで生きているかのように揺らめいていた。
ソフィアが文字を解析し、門を開く儀式を始める。彼女の動きは確信に満ちていたが、その途中で突如、影が襲い掛かる。現れたのは、王宮の舞姫カティアだった。美貌と優雅さで知られる彼女は、反乱軍のスパイとして神殿の秘宝を狙っていたのだ。
「この秘宝があれば、王国は変わる!」
彼女の言葉に、セレナが即座に反応し剣を交える。周囲は一触即発の緊張感に包まれたが、リディアはその場を収めるように進み出た。彼女は静かに両手を掲げ、目を閉じた。すると、空気が一変し、重苦しい炎の気配があたりを支配する。
神殿の奥から現れたのは、紅の神の化身――巨大な炎の龍だった。その瞳には怒りと悲哀が渦巻いていた。一行はその圧倒的な存在感に震えながらも、リディアの背に信頼を寄せた。
龍は低く唸り声を上げた。
「試練を越えられるのか。我が望む真実を示せ。」
リディアは宝を捧げることで怒りが静まると信じていた。しかし、龍が求めた答えはそれではなかったのだーーー。
【紅炎の神託】 (こうえんのしんたく)とは、
紅炎(こうえん):赤く燃え上がる炎のこと
神託(しんたく):神の意志や予言が人間に伝えられることを指します