ある朝、台所からいい香りが漂ってきた。学校へ行く準備をしていた俺は、不思議に思って台所を覗くと、妹が真剣な表情で弁当を作っていた。驚いて声をかけると、彼女は一瞬びくっとしてから、いつものツンとした表情で振り返った。
「な、何見てんのよ!あんたのために作ってるわけじゃないんだからね!ただの練習よ!」
その言葉に苦笑しつつも、心の中では嬉しかった。彼女は料理が得意じゃなかったし、俺のためにこんなに早起きして弁当を作ってくれるなんて、予想もしていなかったからだ。
「ありがとう、すごく嬉しいよ」と俺が言うと、彼女は顔を真っ赤にして目をそらした。「う、うるさい!べ、別に喜ばれるために作ったわけじゃないんだから!」
そんな姿が愛おしくて、俺は優しく頭を撫でた。一瞬驚いたようだったが、すぐに目を閉じて照れくさそうに微笑んだ。
「ま、まあ、こんなこと滅多にないんだから、感謝しなさいよね」