「おーい! 先輩、見てくださいよ! 海ですよ、う・み!」

真っ青な空の下、波打ち際でこちらを振り返った彼女は、太陽に負けないくらいの明るい声を上げた。

「……いや、見ればわかるけどさ。なんでそんなにドヤ顔なの?」

「だって、ついに辿り着いたんですよ。駅から歩いて五分の砂浜に!」

「……駅から五分? ここ、隣町からバスで一時間の秘境の海岸だよ。君、また反対方向の電車に乗ったな?」

「ええっ!? ここはどこですか! 私は誰ですか!」

彼女はガーンとショックを受けたように頭を抱えたが、すぐにケロッとして波打ち際へ駆け寄った。

「まあ、いいじゃないですか! 怪我の功名ってやつですよ。見てください、水が透き通っててすっごく綺麗!」

「まあ、確かに綺麗だけどさ。その格好、濡れたら透けちゃうから気をつけて……あ、もう遅いし」

「ひゃうっ!? 波が意外とアグレッシブです! 冷たーい!」

バシャーンと派手な音を立てて波を被り、彼女のセーラー服がしっとりと重そうになる。

「……もう。着替えなんて持ってきてないだろ?」

「あはは、大丈夫ですよ! 太陽さんに全力でお願いして、三分で乾かしてもらいますから!」

「無理言うなよ。ほら、風邪引く前に上がるぞ」

「えー、もっとパチャパチャしたいですー! ほら、先輩も靴脱いで! 一緒に迷子になれば怖くないですよ!」

そう言って彼女は、濡れた袖を振り回しながら僕に向かって突撃してきた。

「やめろ、こっちに来るな! 服が濡れる!」

「逃げても無駄ですよー! 海の神様(自称)の呪いを受けてくださいっ!」

夏の終わりの静かな海に、彼女の笑い声と僕の悲鳴がどこまでも響き渡っていった。

呪文

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