本日のランチ
けんちん汁定食
――根菜の湯気に、冬の輪郭を見る
派手な料理ではない。
けんちん汁は、まず湯気で語る。
器から立ち上る熱と香りだけで、「今日はこれでいい」と思わせる力がある。
箸を置き、まずはひと口すする。
出汁は濃すぎず、しかし薄くもない。
醤油の輪郭が端正で、そこに胡麻油がほんの少しだけ線を引いている。
香りが前に出すぎないのがいい。鍋料理ではなく、あくまで定食の汁として成立している。
具は大ぶりで、煮崩れはない。
大根は角が残りながら、噛むと水気がほどける。
人参は甘みが出て、こんにゃくはきちんと下処理され、余計な匂いがない。
里芋(あるいは芋類)のねっとり感が、全体の温度を一段上げてくれる。
豆腐は、汁の中で崩れない強さがありながら、口に入れると柔らかい。
こういう「見えない丁寧さ」があると、食べていて安心する。
けんちん汁は、手数を誇る料理ではなく、手を抜かない料理なのだ。
白ごはんを一口、汁を一口。
この往復が自然に続く。
味噌汁とは違う、具の密度があるからこそ、ごはんと釣り合う。
副菜や香の物は控えめで、主役を邪魔しない。
定食全体が「軽く整える」方向に寄せられている。
食べ終えた後に残るのは、満腹よりも落ち着きだ。
胃が温まり、呼吸がゆっくりになる。
冬の定食とは、本来こういうものかもしれないと思った。
■ 締めの一文(編集後記的まとめ)
けんちん汁は、足し算で強くしない。
湯気と根菜の甘みで、静かに満たす定食である。
■ 次回予告(1/27掲載予定)
次回の食彩探訪は、
「ハンバーグ定食 ― 肉の温度と、ソースの設計」。
切った瞬間の肉汁、焦げ目の香ばしさ、そしてソースの重なり。
洋定食の王道にこそ、店の個性がはっきり出る。
次回もまた、日常の基準点を確かめたい。
呪文
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