今時のドライアド※ストーリー追加しました
使用したAI
Stable Diffusion XL
「いいこと、みんな。よく聞いて」
木漏れ日が降り注ぐ、森の開けた場所。
アルラは仁王立ちで、そこに集まった小さな聴衆に向かって宣言した。
リスは梢から顔を出し、ウサギはぴくぴくと鼻を動かし、小鳥たちは枝の上で不思議そうに首を傾げている。
「ファンタジーの時代は終わったのよ! 剣や魔法で、どうやって現代の人間を撃退できるって言うの? 無理よ!」
ビシッと人差し指を天に突き刺すアルラ。
その姿は、どこかから拾ってきたであろう、ぶかぶかの迷彩服に身を包んでいる。
彼女のトレードマークであるラウンドフレームの眼鏡が、決意に燃える瞳の奥でキラリと光った。
これは視力矯正のためではない。彼女が憧れてやまない近くの街に住む森林保護団体にいる「知的でクールな人間」の模倣なのだ。
「これからは火力。そう、フィジカルと火力の時代よ!」
「よーっし!」と気合一閃。
彼女はファイティングポーズをとる。しなやかなドライアドの身体にはまるで似つかわしくない、角張った動きだ。
「まずは基本のキックから! 私の鍛え上げた脚技、とくとご覧あれ! シュッ! フッ! ハッ!」
口では勇ましい擬音を発しながら、アルラはしなやかな足を空高く蹴り上げた。
風を切る音は確かに鋭い。森の精霊としての身体能力は本物だ。
だが、彼女の才能はそこまでだった。
最高点に達した足が、そのまま彼女の身体のバランスをあらぬ方向へと引っ張っていく。
「あれっ? あ、ちょっ……きゃあああ!?」
ぐらり、と体勢が崩れ、軸足がもつれる。
短い悲鳴と共に、アルラは見事なまでに盛大に、背中から地面へ倒れ込んだ。
ドサッ! という情けない音と、舞い上がる土埃。
静寂が落ちる。
リスはもぐもぐと木の実を食べるのを再開し、ウサギは興味を失くしたようにぷいとそっぽを向いた。
小鳥たちは「ちゅん?」と鳴いただけだ。
「……うぅ。見てなさいよ、今のはウォーミングアップだから」
背中と頭をさすりながら、アルラは強がってむくりと起き上がる。頬はほんのり赤い。
「……キックだけじゃダメね。もっとこう、一撃で度肝を抜くような、圧倒的な何かが……」
ぶつぶつと呟きながら、彼女は茂みの奥に隠していた「切り札」を引っ張り出してきた。
古びてはいるが、ずっしりとした重みを持つ鉄の塊。
人間が言うところの、猟銃というものらしい。
「ふふふ……これよ、これ。文明の利器。これさえあれば、森を荒らす不届き者なんてイチコロなんだから!」
アルラは銃を構える。
しかし、その構えは雑誌で見たポーズを適当に真似ただけで、ひどくぎこちない。
重たい銃身がふらふらと揺れ、狙いなど定まるはずもなかった。
「ええと、こうして……こうかな? う、重っ……!」
彼女の華奢な腕がぷるぷると震える。
動物たちは、さっきよりも少しだけ遠巻きに彼女の様子をうかがっていた。
何か、本能的に嫌な予感がしたのかもしれない。
「い、いくわよ……! 私の正義の鉄槌を……食らいなさーい!」
引き金にかけた指に、ぐっと力が入る。その瞬間。
パンッ!
乾いた破裂音が森に響き渡った。アルラの肩に、想像を絶する衝撃が走る。
「ひゃんっ!?」
情けない悲鳴と共に、彼女はまたしても尻餅をついた。
手からすっぽ抜けた猟銃が、ごろりと地面を転がる。
その時ろくに整備されていなかった猟銃から熱を持った薬莢が森に落ちる。
硝煙の匂いが鼻をく。
「い、痛たたた……な、何なのよこれ……全然言うこと聞かないじゃない……」
涙目で肩をさするアルラ。
彼女の撃った弾は、幸いにもどこにも当たらず、ただ地面をえぐっただけだった。
……そう、弾丸はだ。
「……ん? なんか、焦げ臭い?」
彼女が顔を上げると、そこには嫌な匂いのする薬莢。
そして、その落ちた先にある枯れ葉の山から、ぽすっと小さな煙が上がっているのが見えた。
「え?」
次の瞬間、ボッ、という音と共に、乾いた下草にオレンジ色の炎が燃え移る。
「えええええええええ!?」
アルラの顔からサッと血の気が引いた。火は見る見るうちにじわじわと広がり始める。
森のドライアドとして、火事だけは絶対に起こしてはならない失態だ。
「ちょ、ちょっと待って! アワアワアワ……!」
完全にパニックに陥ったアルラは、必死に足で火を踏み消そうとする。
しかし、迷彩服の裾が邪魔でうまく動けない。
むしろ、彼女がばたつくたびに風が送られ、火の勢いは増すばかりだった。
「だ、だめぇー! 消えて、お願いだから消えてぇぇぇ!」
「どうしたんだい、お嬢ちゃん」
不意に、背後から穏やかな声がした。
「え?」
振り返ると、そこに立っていたのは、ハイキング用の服を着た人間の家族だった。
リュックを背負った父親、心配そうな顔の母親、そして、きょとんとした目でアルラを見つめる小さな男の子。
アルラの思考が、カチンと音を立てて凍りついた。
(に、人間……!? な、なんでこんなところに……!?)
最悪だ。最悪のタイミングすぎる。
森を守るための訓練が、森を焼く大惨事を引き起こし、それをよりによって「撃退」対象であるはずの人間に見られるなんて。
「火事かい? 大変だ!」
父親は叫ぶやいなや、背負っていたリュックから大きなペットボトルを取り出し、手際よく火元に水をかけた。
ジュウウウッという音と共に白い水蒸気が上がり、あれほどアルラを追い詰めた炎は、あっけなく鎮火していく。
アルラは、その場に立ち尽くすことしかできなかった。
頭は真っ白。顔が燃えるように熱い。
これは、火の熱さのせいだけではない。
「よかった、大したことなくて。怪我はないかい?」
母親が優しく声をかけてくる。
男の子が、アルラの格好をまじまじと見ながら言った。
「わあ、お姉ちゃん、なんだかすごい服着てる! かっこいいね!」
その悪意のない一言が、アルラの心にぐっさりと突き刺さる。
かっこいい? これが?
火遊びをしてボヤ騒ぎを起こし、人間に助けてもらう情けない姿の、どこが。
「あ……あ……」
何か言わなければ。
ありがとう、とか。ごめんなさい、とか。
でも、喉がカラカラに乾いて、言葉にならない。
恥ずかしさと自己嫌悪で、視界が滲んできた。
眼鏡のレンズが、すすで少し汚れているのが見えた。
父親は鎮火を確認すると、にこりと笑って言った。
「サバゲーか何かかな? 本当は怒らないといけないんだが。しっかり反省しているようだ。これからは火の元には気をつけないとね。じゃあ、僕たちはこれで」
そう言って、家族は会釈をすると、また森の小道へと歩き去っていった。
嵐のように現れ、嵐のように去っていく。
後に残されたのは、小さな黒い焦げ跡と、呆然と立ち尽くすアルラだけだった。
静まり返った森に、リスが枝から降りてきて、彼女の足元でチチッと鳴いた。
まるで、「何やってるの?」とでも言いたげに。
その瞬間、アルラの張り詰めていた何かが、ぷつりと切れた。
彼女は天を仰ぎ、ありったけの声で叫んだ。
「おのれ人間めぇぇぇぇぇぇぇ!」
その声は、森中に響き渡ったが、怒りというよりは、ほとんど泣き声に近かった。
なお、帰ったら長老に物凄い怒られて。
火を消してくれた家族の元に泣きながら山菜を持って謝りに行く事になるのだが。
それはまた別のお話。
※しれっと投稿後1時間以上たってから小説を追加する蛮行w
木漏れ日が降り注ぐ、森の開けた場所。
アルラは仁王立ちで、そこに集まった小さな聴衆に向かって宣言した。
リスは梢から顔を出し、ウサギはぴくぴくと鼻を動かし、小鳥たちは枝の上で不思議そうに首を傾げている。
「ファンタジーの時代は終わったのよ! 剣や魔法で、どうやって現代の人間を撃退できるって言うの? 無理よ!」
ビシッと人差し指を天に突き刺すアルラ。
その姿は、どこかから拾ってきたであろう、ぶかぶかの迷彩服に身を包んでいる。
彼女のトレードマークであるラウンドフレームの眼鏡が、決意に燃える瞳の奥でキラリと光った。
これは視力矯正のためではない。彼女が憧れてやまない近くの街に住む森林保護団体にいる「知的でクールな人間」の模倣なのだ。
「これからは火力。そう、フィジカルと火力の時代よ!」
「よーっし!」と気合一閃。
彼女はファイティングポーズをとる。しなやかなドライアドの身体にはまるで似つかわしくない、角張った動きだ。
「まずは基本のキックから! 私の鍛え上げた脚技、とくとご覧あれ! シュッ! フッ! ハッ!」
口では勇ましい擬音を発しながら、アルラはしなやかな足を空高く蹴り上げた。
風を切る音は確かに鋭い。森の精霊としての身体能力は本物だ。
だが、彼女の才能はそこまでだった。
最高点に達した足が、そのまま彼女の身体のバランスをあらぬ方向へと引っ張っていく。
「あれっ? あ、ちょっ……きゃあああ!?」
ぐらり、と体勢が崩れ、軸足がもつれる。
短い悲鳴と共に、アルラは見事なまでに盛大に、背中から地面へ倒れ込んだ。
ドサッ! という情けない音と、舞い上がる土埃。
静寂が落ちる。
リスはもぐもぐと木の実を食べるのを再開し、ウサギは興味を失くしたようにぷいとそっぽを向いた。
小鳥たちは「ちゅん?」と鳴いただけだ。
「……うぅ。見てなさいよ、今のはウォーミングアップだから」
背中と頭をさすりながら、アルラは強がってむくりと起き上がる。頬はほんのり赤い。
「……キックだけじゃダメね。もっとこう、一撃で度肝を抜くような、圧倒的な何かが……」
ぶつぶつと呟きながら、彼女は茂みの奥に隠していた「切り札」を引っ張り出してきた。
古びてはいるが、ずっしりとした重みを持つ鉄の塊。
人間が言うところの、猟銃というものらしい。
「ふふふ……これよ、これ。文明の利器。これさえあれば、森を荒らす不届き者なんてイチコロなんだから!」
アルラは銃を構える。
しかし、その構えは雑誌で見たポーズを適当に真似ただけで、ひどくぎこちない。
重たい銃身がふらふらと揺れ、狙いなど定まるはずもなかった。
「ええと、こうして……こうかな? う、重っ……!」
彼女の華奢な腕がぷるぷると震える。
動物たちは、さっきよりも少しだけ遠巻きに彼女の様子をうかがっていた。
何か、本能的に嫌な予感がしたのかもしれない。
「い、いくわよ……! 私の正義の鉄槌を……食らいなさーい!」
引き金にかけた指に、ぐっと力が入る。その瞬間。
パンッ!
乾いた破裂音が森に響き渡った。アルラの肩に、想像を絶する衝撃が走る。
「ひゃんっ!?」
情けない悲鳴と共に、彼女はまたしても尻餅をついた。
手からすっぽ抜けた猟銃が、ごろりと地面を転がる。
その時ろくに整備されていなかった猟銃から熱を持った薬莢が森に落ちる。
硝煙の匂いが鼻をく。
「い、痛たたた……な、何なのよこれ……全然言うこと聞かないじゃない……」
涙目で肩をさするアルラ。
彼女の撃った弾は、幸いにもどこにも当たらず、ただ地面をえぐっただけだった。
……そう、弾丸はだ。
「……ん? なんか、焦げ臭い?」
彼女が顔を上げると、そこには嫌な匂いのする薬莢。
そして、その落ちた先にある枯れ葉の山から、ぽすっと小さな煙が上がっているのが見えた。
「え?」
次の瞬間、ボッ、という音と共に、乾いた下草にオレンジ色の炎が燃え移る。
「えええええええええ!?」
アルラの顔からサッと血の気が引いた。火は見る見るうちにじわじわと広がり始める。
森のドライアドとして、火事だけは絶対に起こしてはならない失態だ。
「ちょ、ちょっと待って! アワアワアワ……!」
完全にパニックに陥ったアルラは、必死に足で火を踏み消そうとする。
しかし、迷彩服の裾が邪魔でうまく動けない。
むしろ、彼女がばたつくたびに風が送られ、火の勢いは増すばかりだった。
「だ、だめぇー! 消えて、お願いだから消えてぇぇぇ!」
「どうしたんだい、お嬢ちゃん」
不意に、背後から穏やかな声がした。
「え?」
振り返ると、そこに立っていたのは、ハイキング用の服を着た人間の家族だった。
リュックを背負った父親、心配そうな顔の母親、そして、きょとんとした目でアルラを見つめる小さな男の子。
アルラの思考が、カチンと音を立てて凍りついた。
(に、人間……!? な、なんでこんなところに……!?)
最悪だ。最悪のタイミングすぎる。
森を守るための訓練が、森を焼く大惨事を引き起こし、それをよりによって「撃退」対象であるはずの人間に見られるなんて。
「火事かい? 大変だ!」
父親は叫ぶやいなや、背負っていたリュックから大きなペットボトルを取り出し、手際よく火元に水をかけた。
ジュウウウッという音と共に白い水蒸気が上がり、あれほどアルラを追い詰めた炎は、あっけなく鎮火していく。
アルラは、その場に立ち尽くすことしかできなかった。
頭は真っ白。顔が燃えるように熱い。
これは、火の熱さのせいだけではない。
「よかった、大したことなくて。怪我はないかい?」
母親が優しく声をかけてくる。
男の子が、アルラの格好をまじまじと見ながら言った。
「わあ、お姉ちゃん、なんだかすごい服着てる! かっこいいね!」
その悪意のない一言が、アルラの心にぐっさりと突き刺さる。
かっこいい? これが?
火遊びをしてボヤ騒ぎを起こし、人間に助けてもらう情けない姿の、どこが。
「あ……あ……」
何か言わなければ。
ありがとう、とか。ごめんなさい、とか。
でも、喉がカラカラに乾いて、言葉にならない。
恥ずかしさと自己嫌悪で、視界が滲んできた。
眼鏡のレンズが、すすで少し汚れているのが見えた。
父親は鎮火を確認すると、にこりと笑って言った。
「サバゲーか何かかな? 本当は怒らないといけないんだが。しっかり反省しているようだ。これからは火の元には気をつけないとね。じゃあ、僕たちはこれで」
そう言って、家族は会釈をすると、また森の小道へと歩き去っていった。
嵐のように現れ、嵐のように去っていく。
後に残されたのは、小さな黒い焦げ跡と、呆然と立ち尽くすアルラだけだった。
静まり返った森に、リスが枝から降りてきて、彼女の足元でチチッと鳴いた。
まるで、「何やってるの?」とでも言いたげに。
その瞬間、アルラの張り詰めていた何かが、ぷつりと切れた。
彼女は天を仰ぎ、ありったけの声で叫んだ。
「おのれ人間めぇぇぇぇぇぇぇ!」
その声は、森中に響き渡ったが、怒りというよりは、ほとんど泣き声に近かった。
なお、帰ったら長老に物凄い怒られて。
火を消してくれた家族の元に泣きながら山菜を持って謝りに行く事になるのだが。
それはまた別のお話。
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