12個の物語

これは12の物語、別々なようで繋がっています。

↓MAOさんのコメントの後に追加しました。2025年7月3日13:05

「十二の夢をめぐる航海」

① 日の沈む海岸に立つ女性 — “夢の始まり”
静かな海岸。夕日が水平線に沈もうとしている。女性は波打ち際で一人佇み、「ここからすべてが始まった」と呟く。彼女の手には、小さな金属の鍵。彼女の名はアイラ。彼女は、何かを思い出そうとしているが、思い出せない。

② 都市を背負って海を歩く巨大な亀 — “記憶の運び手”
アイラが視線を上げると、海の彼方から巨大な亀が歩いてくる。その甲羅の上には、近未来的な都市が建っていた。亀は「記憶の回廊」と呼ばれ、失われた記憶を旅する者に見せる存在。アイラはその背に乗り込む。

③ 尖塔の聳える中世の都市で戦うふたりの女性 — “裂かれた契約”
記憶の扉が開き、彼女は中世の都市に立っていた。そこでは、二人の女性が命を賭して戦っている。一人はアイラに酷似し、もう一人は彼女の妹と思しき存在。かつてこの地で「鍵」を巡る契約が破られ、時の歯車が狂い始めた。

④ ゴチック風の未来都市に佇む少女 — “断絶の未来”
一転して舞台は遥か未来。空に浮かぶ鉄とガラスの街。アイラの姿は少女へと若返り、感情のない世界に迷い込む。人々は感情を削除され、魂を失っている。彼女だけが「花の記憶」を持っていた。

⑤ 猫のいる20世紀の日本の自室で寛ぐ女性 — “束の間の静寂”
さらに別の時間。昭和の日本の一室。古い扇風機が回り、猫が窓辺で丸くなる。アイラはこの時代の若い女性「綾」として暮らしている。ある日、猫の首輪に古びた鍵が結びつけられているのを見つける。

⑥ 植物が繁茂する廃墟に集まる半透明のエイリアン — “緑の記録者たち”
再び世界が変わる。地球ではない惑星の廃墟に、植物と光のエネルギーをまとったエイリアンが集う。彼らは「記録者」。かつての文明の滅びを観察し、記憶として保存している。アイラはその中に「自分の夢」を見る。

⑦ 花が咲く野山を歩く女性 — “失われた庭園”
今度は原初の自然に囲まれた世界。花咲く丘を歩くアイラは、懐かしい匂いに導かれ、幼いころの記憶と向き合う。彼女が最後に笑った場所。この花園こそ、すべての鍵が生まれた起点であった。

⑧ 晴れた日の入江のコテージとボート — “約束の場所”
アイラは小さなボートに乗って、かつて誰かと交わした約束のコテージを訪れる。「この場所を思い出したら、戻ってこれる」と言われた言葉。扉の前で、彼女はずっと持っていた鍵を使う。

⑨ ジャングルにいる虎に似た動物の親子 — “守護と誕生”
扉の向こうは熱帯のジャングル。そこに棲む虎のような動物たちは、次元を超えた存在であり、魂の守護者。母親の虎が仔に「夢を忘れてはいけない」と語る。仔の瞳は人間のように澄んでいる。アイラはそれを見て泣く。

⑩ 満月のハロン湾の岸辺で泣く女性 — “引き裂かれた魂”
満月が水面を照らすベトナムの神秘的な湾。アイラは岸辺で膝をつき、過去の自分たちの過ちを思い出す。かつて大切な人を守れなかったこと。そして、この旅は赦しを求める巡礼だったと気づく。

⑪ 古代中国の城塞 — “封印の起源”
記憶はさらに遡る。そこは古代中国、戦乱の中、アイラは司祭の娘であり、世界の均衡を保つ「鍵」の管理者だった。だが、彼女は愛ゆえに禁忌を犯し、鍵を分割し世界に放ってしまった。

⑫ 雪原に立つ1本の木 — “夢の終わり、始まりの木”
最後の場面は、果てしない雪原。吹雪の中、ぽつんと立つ1本の木。その根元に、アイラは静かに座っている。全ての記憶を巡り終えた彼女は、鍵を雪に埋め、「これでまた誰かが、夢を始められる」と呟く。

空を見上げると、そこには再び、海岸に沈む夕日が——。

【終章】
すべては繋がっていた。異なる時代、異なる場所、異なる姿の彼女たちは、ひとつの魂の旅であり、記憶を取り戻すための儀式だった。

鍵は閉ざされたのではなく、新たな扉を開くために存在していた。



　
MAOさんの企画「ヨコイチ」参加作品です。
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