【それぞれのお盆休み】
――ステージを降りた彼女たちの、夏の幕間――

市民アリーナの「夏のファッションショー」、学内ファッションショー、そしてオープンキャンパス。慌ただしくも華やかな夏の行事を終えたモデルサークルのメンバーたちは、それぞれの故郷や家族のもとでお盆休みを過ごします。

青髪ボブ子ちゃんは、家族とともに田舎の親戚宅へ。畑の収穫や盆提灯の準備を手伝い、夜には浴衣姿で小さな盆踊りに参加します。モデル活動をしている姉もいったん実家には帰ってきましたが、仕事が忙しく、田舎の親戚宅までは同行できませんでした。姉のいない帰省先で、青髪ボブ子ちゃんは「モデルの妹」でも「サークルの進行役」でもなく、親戚から本名で呼ばれる一人の娘として、静かな時間を過ごします。縁側でノートを開くころには、姉と同じ道を追うことだけではない、自分らしい活動の形を少しずつ考え始めています。

紫髪ウルフちゃんは、地元の友人たちにショーの映像を披露し、商店街で新しい動画撮影に挑戦します。最初は勢いのまま撮ろうとしますが、友人に促されて店の人へきちんと相談。その一手間が、地元の衣装を借りたコラボ撮影へとつながります。知名度を求めて走り続ける彼女が、相手への敬意や許可は企画を止めるものではなく、むしろ可能性を広げるものだと知る休暇です。

茶髪先輩(こはる先輩)は、実家でゆっくり眠り、好きなアニメを楽しみながら衣装のアイデアを膨らませます。母や祖母と古い浴衣や帯を整理しているうちに、端切れを活用した華やかな衣装案を思いつきますが、広げすぎた構想を祖母に指摘され、ようやく予算表と向き合うことに。創作の楽しさと、それを実現するための現実的な視点の両方を持ち帰ります。

黒髪先輩・REIは、帰省中もパソコンを開き、就職活動やサークルの事務作業を続けています。家族とショーの映像を見ても、本人が気にするのは歩き方や演出上の改善点ばかり。しかし家族が注目したのは、後輩たちが互いを支え合う姿と、それを見守る彼女の誇らしげな表情でした。最後にはスマートフォンの通知を切り、家族と墓参りへ向かいます。責任を一人で抱え続けるのではなく、ときには休み、後輩に任せることも必要なのだと気づき始めます。

休暇の終わりを表すのは、四人が持ち帰る色とりどりのお土産と、青髪ボブ子ちゃんが親戚から持たされた夏野菜です。それぞれ異なる場所で過ごした時間は、休み明けの部室で再び一つになります。

【セリフを入れなかった理由】
本作では、あえて登場人物のセリフを描いていません。

普段の彼女たちは、企画会議やステージの打ち合わせ、取材対応など、常に言葉を交わしながら活動しています。だからこそ、お盆休みの場面では会話による説明を控え、表情、しぐさ、服装、家族との距離、小物や風景によって、それぞれの心境を表現しました。

青髪ボブ子ちゃんが縁側でノートを開く姿、ウルフちゃんが店主へ頭を下げる姿、茶髪先輩が予算表を手に困った顔をする姿、黒髪先輩がスマートフォンの通知を切る姿。それらは言葉にしなくても、彼女たちが休暇中に得た小さな変化を物語っています。

また、セリフを置かないことで、読者自身が各場面の会話や家族の声を想像できる余白を残しました。この二枚は大きな事件を描く物語ではなく、華やかな舞台と次の活動の間にある、静かな「夏の幕間」です。声ではなく空気で読ませることが、この作品にふさわしい表現だと考えました。

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