医者に町の病のことを聞く。
「ワシも調べておるのだが、同じような症状を記録した文献は見当たらない。
もしや、これは身体に作用する病ではなく魔力に作用する何らかの術に近いのかもしれん」
医者は書物を閉じ、続けてこう言った。
「であれば、休火山の湖に生える月光草を煎じれば、病状の進行を抑える薬ができる可能性もあるが……」
「休火山の湖?」
「エルフェアルとの国境に近い、土地の者にはタシュアと呼ばれている湖だ」
「湖の月光草だな?」
「旅の方がわざわざ出向いてくれると?」
「私もこの国に着いて早々、謎の病で倒れては困るからな。やれるだけやってみるさ」
私は医者を後にし、湖へ向かう準備を整えることにした。