御台場夫人(ごだいばふじん）の伝説

『むかしむかし、中世の日本、とある城下町に高名な武将・**大場頼兼（おおば よりかね）**が治める領地がありました。この地では重い年貢が課せられ、農民たちは苦しんでいました。

頼兼の妻、御台場（ごだいば）夫人は、慈悲深く領民を思いやる女性でした。彼女は夫に何度も年貢を軽くするよう嘆願しましたが、頼兼は聞き入れませんでした。そこで、御台場夫人は決意し、頼兼にこう提案しました。

「もし私が、素裸で城下を馬で一周すれば、年貢を軽くしてくれますか？」

頼兼は、妻がそんなことをするはずがないと考え、「それができたら、年貢を半減しよう」と約束しました。

その夜、御台場夫人は長い黒髪で体を覆い、静かに馬に乗って城下を巡りました。多くの村人は彼女の深い慈悲を察し、家の戸を閉め、目を伏せました。しかし、中には好奇心に負けて、そっと障子の隙間から覗いた者たちもいました。

翌朝、御台場夫人の覚悟を知った頼兼は驚き、約束どおり年貢を半減しました。しかし、夫人が見られたことを知ると、その覗き見た者たちは後に天罰を受けたとも、目が見えなくなったとも伝えられています。

こうして、御台場夫人の勇気と優しさの物語は、長く語り継がれることとなりました。

この逸話に感銘を受けた堺の商人が、当時南蛮から伝わった千代惟糸（ちよこれいと）という菓子に
御台場（ごだいば）という名前を冠しました。』

後のチョコレートの原型となるこの菓子が将軍家御用達となった話はこれより50年後の話である。（民明書房刊　非貧具吐夢～御台場と千代惟糸　より）