皆様、こんにちは~♪
ただいま執筆している小説の番外編。
私を避暑地へ連れてって♡
も、終盤に差し掛かってきました。
あと14エピソード程で完結を予定しております。
そして、明後日日曜日に!

いわしまんさんの、エリアーヌ嬢がご登場です♪

アカネちゃんも少しだけ(^^ 出ます☆
その、彼女のご出演シーン!
ちちぷいの皆様に先行で、ご登場シーンをご紹介します。
安心してください、進展しませんので(何
では!
~~~~~~

18時20分を少し回った頃――カラン♪ コロン♪ と、軽やかな足音が響いた。

 音の方へ目を向けると、長く美しい銀色の髪を揺らしながら、一人の女性がこちらへ向かってくる。
 ちょうど、エントランスは彼女の進行方向の先にあり、僕の立っている場所を通り過ぎる形になる。

 その瞬間、彼女は突然つまずき、僕の方へ倒れ込んできた。

「きゃ! きゃああ!」

「っと……」

 僕はすぐに腕を伸ばし、彼女をそっと抱きとめて転倒を防いだ。
 そのまま、ゆっくりと体勢を整えながら、片足ずつ彼女を地面に下ろしていく。

「ん? 下駄の鼻緒が切れたのか?」

 彼女の足元を見ると、女性用の下駄を履いていた。
 正絹《しょうけん》の鼻緒なのだろうけれど、前坪《まえつぼ》の穴の辺りで切れていた。
 下駄をよく見ると、うこん型と呼ばれる、足の形に沿ったカーブがある。
 丸みがあり、足に優しくフィットして尚、可愛らしいデザインだ。
 色は鮮やかな朱《しゅ》漆《うるし》塗りの中に、ラメが入っていて美しく煌めいている。

 なるほど。鼻緒が切れ、足元が不安定になり、躓いたのだろう。

「ご、ごめんなさい! そ、その……」

 彼女は顔を真っ赤に染めながら、僕に謝罪の言葉を口にした。

 銀色の髪の合間から、ぴょこんと飛び出したうさぎの耳が揺れている。
 ウサギ族の女性か。洞窟ウサギなどの戦闘種ではなく、穏やかな性格の種族だろう。

 美しい赤い瞳に、知的な美貌を感じさせる顔立ち。
 彼女が身にまとっているピンク色の浴衣には、可愛らしいウサギ柄の刺繍が施されており、柔らかな雰囲気を引き立てている。
 黒い帯には赤い帯紐があしらわれ、ところどころに人参のチャームが飾られていて、細部まで愛らしさが込められていた。

「僕は構わないよ。ただ、鼻緒が切れてしまっているようだ。少し待てるかな? レディ?」

「え!」

 先ほどは転倒しかけた恥ずかしさで顔を赤らめていた彼女だが、今は別の感情がその瞳に宿っている。

「足袋が汚れてしまうといけない。よければ、僕の膝を使ってくれて構わないよ」

 僕の申し出に、彼女は――

「え! ええ! えええええ! だ、大丈夫ですわよ! その……」

 額から汗が噴き出し、顔はさらに真っ赤に染まっていく。だが――

「僕は気にしないよ。下駄を直さなければならない。すぐに終わるから、どうぞ」

 僕は静かに膝を差し出し、乗せてもらう体勢になる。

「少しだけ、失礼しますね」

 そう声をかけて、彼女の足元に手を添え、そっと下駄を外す。そのまま、彼女の足を膝に乗せる。
 浴衣の柄に合わせた見事な下駄。繊細な作りだが、修復は可能だ。
 切れた鼻緒の状態を確認しながら、下駄の裏を静かに返す。
 木の台に指を添え、前坪の穴に指先を滑り込ませる。

 ――これだな。

 指先で鼻緒を引き出すと、細く裂けた布が見えた。
 僕は帯から小さな工具セットを取り出し、裂け目を丁寧に結び直す。
 静かに穴へと差し込みながら、彼女の足に負担をかけないよう、指先に神経を集中させて作業を進める。

 ――ほんの数分の沈黙。

 だが、その間にも、彼女の鼓動が伝わってくるような気がした。
 修復を終えると、彼女の足にそっと下駄を戻す。
 その瞬間、小さく息を呑む音が聞こえた。

「おみ足に痛みはありませんか?」

「……ええ。ありがとうございます……」

 彼女は頬を染めながら、視線を伏せる。

 その瞳には、確かな安心と――少しのときめきが宿っていた。

 「……これで、もう大丈夫。歩いてみてくれるかな?」

 彼女はそっと足を下ろし、立ち上がる。
 歩みはまだ少しぎこちないが、下駄はしっかりと足を支えていた。

「ありがとうございます……本当に、助かりました……」

 彼女の声は、先ほどよりも少しだけ震えていた。
 
 すると、エントランスの方から、明るい声が響いた。

「エリ~~、何してるんだよ~、早く、早く~♪」

「カ! カエデ!! あなたって子はぁぁ! 早すぎるんですわよ! あ!」

 エリ? 彼女の名前だろうか。

 顔を上気させながら、彼女は僕に向かって丁寧に礼をする。

「わ、私は『エリアーヌ』と申します。大変助かりましたわ。ですが、すみません、連れが待っていますので、お礼は、いずれ……」

「僕は、『ラーヴィ・グラスドゥヴィ・バラン・シーク』です。エリアーヌ。お連れの元へどうぞ。お礼は気にされなくて大丈夫ですよ」

 僕は微笑みながら、彼女を促し、礼を返す。

「ラーヴィ様……覚えましたわ! 後ほど!」

 カラン♪ コロン♪ と、下駄の音を弾ませながら、エリアーヌは「カエデ」と呼んだ連れの方へと駆けていく。

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