【蔵出 夢絵】湖と渡り鳥

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春の森は、柔らかな光に包まれていた。
梢を渡る風が心地よく、遠くで鳥のさえずりが響いている。
そんな中を、私はアルトリアと並んで歩いていた。

「今日も本当にいいお天気だね」

私がそう呟くと、隣のアルトリアが微笑む。

「ええ。これほど陽の光が暖かいと、まるで春が祝福を与えてくれているように感じます」

その言葉に、私は思わずくすっと笑った。

「相変わらず詩人みたいなこと言うね。……でも、うん、そんな気持ちになる」

ふたりで目を細めながら歩いていると、ふと目の前が開けた。
木々の間から覗いたのは、穏やかに広がる湖だった。

「……ねえ、湖があるよ。ちょっと寄ってみない?」

「ええ、構いません。こうして歩くのも楽しいですが、少し足を休めるのもいいでしょう」

私たちは手を繋いだまま、桟橋に向かう。
そして、そっと靴を脱ぎ、足を水面へ──。


「……わっ!」
湖の水に足を浸けた瞬間、ひやりとした感触に、思わず声が漏れた。

「冷たい!さすがに、まだ早かったかな……?」

「ふふ」

アルトリアは柔らかく笑いながら、自分も足を水に差し入れる。

「……確かに、冷たいですが。貴女が驚くほどではありませんよ?」

「むぅ、騎士はこういうときも強いのね……なら、こうだ!」

思わず悪戯心が勝って、私は足で水をすくって、ぱしゃっとアルトリアにかけた。
しずくが彼女の白いスカートに散るけれど、アルトリアは微動だにしない。

「ふふふ……私にはこの程度の冷たさは通用しません」

「えー?」

「それより───」

そう言ったアルトリアは、静かに足を動かし、勢いよく水を蹴り上げた。
ぱしゃっ!と、さっきよりも多めの水がこちらに飛んできて、私の膝を濡らす。

「ひゃあああああっ!つ、冷たいー!」

思わず体をよじって逃げながらも、私は笑ってしまう。むしろ、もうワンピースも水浸しだ。

「ずるい!アルトリア、そういうのは手加減しないんだもん……!」

「これでも、かなり加減しましたよ?」

そう答える彼女の顔は、とても楽しそうで、いつもより少しだけ子どもっぽく見えた。

そんなひとときを過ごしていると、ふと、上空に大きな影が横切った。

「……あ、あれ……」

私は急いでバッグから双眼鏡を取り出す。
アルトリアが私の動きに気づいて、そっと覗き込んでくる。

「何か、見えたのですか?」

「うん……あっ……!」

双眼鏡越しに、その姿を捉えた瞬間、思わず声が弾む。

「サシバだ!」

「サシバ……?」

「うん、猛禽類のひとつ!そっか……もう渡ってきたんだ……!春の渡来の時期だったんだね」

興奮した私の声に、アルトリアは興味深げに目を細める。

「それは、遠くから海を越えて……?」

「そう!フィリピンとかインドネシアあたりから、日本に戻ってくるんだよ。ちょうどこの時期、繁殖のために」

私は双眼鏡をアルトリアに手渡すと、彼女は丁寧にそれを受け取って、じっと覗き込む。

「大きく、ゆったりと……空を滑るように飛ぶのですね」

その呟きが、なんだか詩的で、思わず微笑む。

「写真、撮りたいなあ……でも、さすがにあの距離じゃ無理だなあ……」

「いえ、貴女が心に焼き付けるなら、それは最良の記録です」

アルトリアはそう言って、双眼鏡を私に返しながら微笑んだ。

その言葉に、胸がじんわりと温かくなる。
風が吹き、湖面が揺れる音が静かに響く。
木々の葉がざわめき、小鳥たちのさえずりとともに、心が溶けていくようだった。

「……癒されるね」

私はアルトリアの隣で、そっと呟く。
彼女は柔らかく頷き、私の手を取ると、両手で包み込んでくれた。

「貴女がこうして幸せそうであれば、私も心が満たされます」

その優しい目に見つめられると、胸がきゅっとなる。
だけど、安心感と温かさが混じって、自然と微笑んでしまう。

「ねぇ……夏になったら、またキャンプとか、トレッキングもしに行こうね」

私がそう言うと、アルトリアはわずかに目を見開き、そして笑った。

「はい。貴女となら、どこまでも行けます。山も、森も、川も……それは、私にとって祝福の旅路となるでしょう」

その言葉を胸に、私はアルトリアの手を握り返した。

水面に映る私たちの姿は、柔らかな風に揺れている。
春の陽光に包まれた湖のほとりで、ふたりだけの静かな時間が、ゆっくりと流れていった。

呪文

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