閉店後のコラボメニュー会議
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ChatGPT
前回「メイドカフェの扉の向こう」からの続き
前回↓
https://www.chichi-pui.com/posts/13fdc65b-1f64-4330-bd72-3a31115d16d4/
最後の客を見送ったあと、メイドカフェ「リリィ」の店内には、昼間とは違う静けさが戻っていた。
アルバイトメイドたちはテーブルを拭き、椅子を整え、カップや皿を厨房へ運んでいる。
オレンジ色の短い髪をした執事さんは、入口の札を「営業中」から「準備中」へ裏返した。
「本日のご帰宅、すべて終了です」
「お疲れさまでしたー!」
店の奥から、アルバイトメイドたちの声が返ってくる。
その直後だった。
「では、ただいまより!」
店長さんが店内中央のテーブルに、大きな模造紙を勢いよく広げた。
「夏ファッションショー・コラボメニュー緊急企画会議を始めます!」
赤いツインテールが大きく跳ねる。
模造紙の中央には、赤い文字でこう書かれていた。
――学生モデル×メイドカフェ
真夏のお帰りファッションメニュー!
料理メイドは、厨房から調理器具を片づけながら静かに言った。
「店長さん。名称がすでに長いです」
「企画名は勢いが大事なの!」
「メニュー名まで長くしないでください」
「そのつもりだったのに!」
料理メイドは聞かなかったことにして、店長さんの向かいに座った。
執事さんとアルバイトメイドたちも、それぞれ椅子を寄せて集まる。
昼間に学生モデルたちが座っていたテーブルには、今度は色鉛筆、メモ帳、食材の仕入れ表、試作写真が並べられた。
「学生さんたち、いい子たちだったね」
淡い水色のメイド服を着たアルバイトメイドが言った。
「青髪のリーダーさん、店長さんに圧倒されてたけど」
「私の歓迎は完璧だったでしょう?」
店長さんが胸を張る。
執事さんは苦笑した。
「最初の三十秒で帰られなくてよかったです」
「何ですって?」
「いえ、何も」
黒髪のアルバイトメイドが手を挙げた。
「紫髪のモデルさん、料理メイドさんのこと、ずっと見てましたよね」
料理メイドは表情を変えない。
「衣装を見ていただけです」
「料理もすごく気に入っていました」
「料理店として当然です」
「でも、ちょっと嬉しかったでしょう?」
「別に」
料理メイドはそう答えたが、仕入れ表を見る目がわずかに柔らかくなった。
店長さんが両手をたたく。
「それでは本題! コラボメニューは、三人の学生モデルさんをイメージしたものにします!」
「三人それぞれ一品ですか?」
アルバイトメイドが尋ねる。
「いいえ!」
店長さんは大きく首を振った。
「三人を一皿にまとめます!」
料理メイドの眉がわずかに動いた。
「嫌な予感がします」
「まず、青髪のリーダーさんを表現するために、青いカレー!」
「却下です」
料理メイドが即答した。
「まだ説明が終わってない!」
「食欲を損ないます」
「では、青いそうめん!」
「着色料に頼りすぎです」
「青いオムライス!」
「卵を青くする理由がありません」
店長さんは模造紙に書いた「青いカレー」を悔しそうに二重線で消した。
「料理メイドは夢がないわね」
「食べ物ですから」
執事さんが遠慮がちに手を挙げた。
「青髪の方は、落ち着いた印象でした。冷たいスープや、透明感のあるゼリーなどはどうでしょう」
料理メイドがうなずく。
「悪くありません。青色そのものではなく、器や盛り付けで涼しさを出せます」
「さすが執事さん!」
先輩メイドの一人が拍手する。
執事さんは少し得意そうに微笑んだ。
「接客で相手の印象を観察するのは得意ですので」
店長さんが目を輝かせた。
「では、そのスープを作ってみて!」
「え?」
「今すぐ!」
執事さんは固まった。
料理メイドが静かに鍋を差し出す。
「どうぞ」
「いや、私は提案をしただけで、調理担当では……」
「料理ができないのですか?」
アルバイトメイドたちの視線が集まる。
執事さんは咳払いをした。
「できないわけではありません」
「以前、ゆで卵を爆発させましたよね」
料理メイドが言う。
「あれは電子レンジとの相性が悪かっただけです」
「フライパンでパンケーキを炭にしたこともあります」
「火力が予想以上だったのです」
「紅茶に塩を入れたことも」
「あれは容器の表示が分かりにくかったんです!」
店内に笑い声が広がった。
執事さんは耳まで赤くしながら腕を組む。
「私は接客担当です。適材適所という言葉があります」
「では、料理は私が組み立てます」
料理メイドは模造紙の横に、新しい紙を置いた。
「三人の印象を、色だけでなく食感や構成で表現しましょう」
料理メイドはまず、青いペンを取った。
「青髪のリーダーは、冷静さと清涼感。ただし、店長さんに圧倒される柔らかさもある」
「圧倒したのは私ね!」
「反省してください」
料理メイドは続けた。
「透明なジュレを使った冷製スープ。中には白い野菜と、青い器に映えるハーブを入れます」
「青い器なら自然ですね」
執事さんがうなずく。
次に料理メイドは紫色のペンを取った。
「紫髪のモデル志望は、スポーティーで鋭い。最初は偏見があったが、気に入ったものは素直に認めた」
店長さんが口を挟む。
「紫芋を山盛りにしましょう!」
「甘味に限定されます」
「紫キャベツ!」
「可能です」
店長さんが勝ち誇った顔をする。
料理メイドは紙に書き込んだ。
「紫キャベツとベリーの酸味を使ったサラダ。見た目は華やかですが、味は引き締めます」
「モード系ですね」
黒髪のアルバイトメイドが言った。
「料理がモード系って、どういう意味?」
別のアルバイトメイドが首をかしげる。
紫色の盛り付け写真を想像しながら、料理メイドは答えた。
「余計な装飾を減らし、形と色の対比を強くするということです」
「それ、紫髪の子が喜びそう!」
アルバイトメイドたちが声を上げた。
最後に、料理メイドは茶色のペンを取った。
「先輩は、メイドカフェ文化を理解していて、三人の中では一番店との距離が近い」
「そして執事さんのファン!」
店長さんが力強く付け加える。
執事さんが困ったように笑う。
「そこはメニューに必要ですか?」
「重要よ!」
店長さんは勢いよく模造紙に、執事服の形をした大きなパンの絵を描いた。
「執事さん型ハンバーグ!」
「なぜ私が焼かれるのですか」
「では、執事さんの顔を描いたオムライス!」
「描くのは誰ですか」
店長さんとアルバイトメイドたちの視線が、執事さんに集まった。
執事さんは首を横に振った。
「無理です」
「接客は得意でしょう?」
「絵を描くことと接客は別です」
料理メイドは少し考えた。
「先輩の要素は、安心感と親しみやすさで表現します。焼きたての小さなパンを添えましょう」
「普通すぎない?」
店長さんが不満そうに言う。
「執事さんが客席で仕上げれば特別になります」
「私が?」
「バターを塗るだけです」
「それならできます」
料理メイドは冷静に続ける。
「ただし、三人分を別々に出すと、コラボとしてまとまりがありません」
店長さんは腕を組んだ。
「一皿にまとめると言ったでしょう?」
「無理に一皿へ詰めると、料理の方向性が崩れます」
「でも、ファッションショーなのよ。華やかさが必要!」
店長さんと料理メイドが向かい合う。
アルバイトメイドたちは二人の間を見比べた。
店長さんの案は大胆で派手だが、料理として成立しにくい。
料理メイドの案は完成度が高いが、少し落ち着きすぎている。
そのとき、執事さんがテーブルの上のファッションショー資料を手に取った。
ページには、ランウェイを歩くモデルたちの配置図が載っている。
「一皿ではなく、一つのコースにしてはどうでしょう」
全員が執事さんを見る。
「コース?」
「はい。ファッションショーでは、一人のモデルだけでなく、何人ものモデルが順番に登場して、全体で一つのテーマを見せます」
執事さんは資料をテーブルに広げた。
「料理も同じように、三つの小さな料理を順番に出します。それぞれの学生モデルを表現しながら、最後に三人が一緒になるような一品を出すんです」
料理メイドの目がわずかに細くなる。
「構成としては理にかなっています」
店長さんも身を乗り出した。
「最後に全員集合ね!」
「そうです。コース全体をランウェイに見立てます」
アルバイトメイドたちが一斉に盛り上がった。
「いいですね!」
「それなら写真も撮りやすい!」
「一品ずつ衣装みたいに見せられる!」
店長さんは模造紙の中央に、大きく新しい題名を書いた。
――真夏のランウェイ・コース!
「決まりね!」
「まだ内容が決まっていません」
料理メイドが言う。
「名前が決まれば半分完成よ!」
「違います」
その後、会議はさらに続いた。
青髪ボブ子ちゃんをイメージした一皿目は、透明感のある冷製スープ。
青いガラスの器に、冬瓜、白いトマト、薄く切ったきゅうり、レモンのジュレを浮かべる。
名前は、
「ブルー・リーダーの涼風ジュレ」
紫髪ウルフちゃんをイメージした二皿目は、紫キャベツ、ビーツ、ブルーベリー、香草を使った小さなサラダ。
黒い皿に直線的に盛り付け、酸味のあるドレッシングで鋭さを出す。
名前は、
「ウルフ・モードの紫彩サラダ」
先輩をイメージした三皿目は、焼きたての小さなパンと、香りのよいハーブバター。
執事さんが客席でパンを割り、バターを添える演出にする。
名前は、
「先輩のお気に入り 執事さんの焼きたてブレッド」
「その名前、恥ずかしくありませんか?」
執事さんが尋ねる。
「ファンは喜ぶわ!」
店長さんが答える。
「先輩本人の許可を取ってください」
料理メイドが釘を刺す。
そして最後の一品。
三人の要素を一つにまとめた、夏野菜の冷製パスタ。
青い器。
紫キャベツとビーツの彩り。
執事さんが客席で仕上げる、レモンとハーブの香り。
中央には、三色の野菜をリボンのように飾る。
料理メイドが完成図を描きながら言った。
「これなら三人の個性がぶつからず、一皿でまとまります」
店長さんが満足そうにうなずく。
「名前は――」
全員が店長さんを見る。
「学生モデルとメイドカフェの、ドキドキ真夏のキラキラお帰りなさいませスペシャル・レインボー・プリンセス冷製パスタ!」
店内が静まり返った。
料理メイドが言う。
「却下です」
「どうして!」
「注文を受ける前に客が疲れます」
「では、略してドキ夏パスタ!」
「意味が分かりません」
アルバイトメイドの一人がおそるおそる手を挙げた。
「『サマーランウェイ・パスタ』はどうですか?」
全員が黙った。
料理メイドがうなずく。
「簡潔です」
執事さんも微笑む。
「ファッションショーとの関係も伝わります」
店長さんは少し悔しそうだったが、最後には大きく丸をつけた。
こうして、メイドカフェ「リリィ」の夏ファッションショー・コラボメニューは決まった。
### 真夏のランウェイ・コース
第一幕
「ブルー・リーダーの涼風ジュレ」
第二幕
「ウルフ・モードの紫彩サラダ」
第三幕
「先輩のお気に入り 執事さんの焼きたてブレッド」
フィナーレ
「サマーランウェイ・パスタ」
料理メイドは試作用の冷製パスタを完成させ、テーブルの中央に置いた。
アルバイトメイドたちが歓声を上げる。
執事さんは慎重にレモンを絞った。
「これくらいなら、私にもできます」
「絞りすぎです」
料理メイドが即座に止めた。
「少ししか絞っていません」
「皿の半分にかかっています」
「あっ」
店長さんは、その様子を見ながら満足そうに笑った。
「完璧ね!」
「どこがですか」
閉店後の店内に、再び笑い声が広がる。
学生モデルたちが知らないところで、夏ファッションショーとのコラボは、すでに料理という形でも動き始めていた。
店長さんは完成した模造紙を、店内で一番目立つ壁に貼った。
その一番下には、赤い文字で大きく書き足されている。
――試食会には学生モデルの皆さんをご招待!
料理メイドが振り返った。
「店長さん。まだ大学へ連絡していません」
「明日の朝、一番にするわ!」
「営業時間前にしてください」
「もちろん!」
その返事を聞きながら、執事さんとアルバイトメイドたちは顔を見合わせた。
また店長さんが、話を大きくしようとしている。
けれど誰も止めなかった。
少しだけ大変で、かなり騒がしくて、それでも面白い夏になりそうだったからだ。
ひとまず<完>
ちちぷいユーザー企画【夏ファッションショー】を開催します。
開催期間
2026/8/3 0:00~2026/8/6 23:59
詳細↓
https://www.chichi-pui.com/events/user-events/d72cfe6b-5da0-4f8e-a9ba-95db041bf672/
前回↓
https://www.chichi-pui.com/posts/13fdc65b-1f64-4330-bd72-3a31115d16d4/
最後の客を見送ったあと、メイドカフェ「リリィ」の店内には、昼間とは違う静けさが戻っていた。
アルバイトメイドたちはテーブルを拭き、椅子を整え、カップや皿を厨房へ運んでいる。
オレンジ色の短い髪をした執事さんは、入口の札を「営業中」から「準備中」へ裏返した。
「本日のご帰宅、すべて終了です」
「お疲れさまでしたー!」
店の奥から、アルバイトメイドたちの声が返ってくる。
その直後だった。
「では、ただいまより!」
店長さんが店内中央のテーブルに、大きな模造紙を勢いよく広げた。
「夏ファッションショー・コラボメニュー緊急企画会議を始めます!」
赤いツインテールが大きく跳ねる。
模造紙の中央には、赤い文字でこう書かれていた。
――学生モデル×メイドカフェ
真夏のお帰りファッションメニュー!
料理メイドは、厨房から調理器具を片づけながら静かに言った。
「店長さん。名称がすでに長いです」
「企画名は勢いが大事なの!」
「メニュー名まで長くしないでください」
「そのつもりだったのに!」
料理メイドは聞かなかったことにして、店長さんの向かいに座った。
執事さんとアルバイトメイドたちも、それぞれ椅子を寄せて集まる。
昼間に学生モデルたちが座っていたテーブルには、今度は色鉛筆、メモ帳、食材の仕入れ表、試作写真が並べられた。
「学生さんたち、いい子たちだったね」
淡い水色のメイド服を着たアルバイトメイドが言った。
「青髪のリーダーさん、店長さんに圧倒されてたけど」
「私の歓迎は完璧だったでしょう?」
店長さんが胸を張る。
執事さんは苦笑した。
「最初の三十秒で帰られなくてよかったです」
「何ですって?」
「いえ、何も」
黒髪のアルバイトメイドが手を挙げた。
「紫髪のモデルさん、料理メイドさんのこと、ずっと見てましたよね」
料理メイドは表情を変えない。
「衣装を見ていただけです」
「料理もすごく気に入っていました」
「料理店として当然です」
「でも、ちょっと嬉しかったでしょう?」
「別に」
料理メイドはそう答えたが、仕入れ表を見る目がわずかに柔らかくなった。
店長さんが両手をたたく。
「それでは本題! コラボメニューは、三人の学生モデルさんをイメージしたものにします!」
「三人それぞれ一品ですか?」
アルバイトメイドが尋ねる。
「いいえ!」
店長さんは大きく首を振った。
「三人を一皿にまとめます!」
料理メイドの眉がわずかに動いた。
「嫌な予感がします」
「まず、青髪のリーダーさんを表現するために、青いカレー!」
「却下です」
料理メイドが即答した。
「まだ説明が終わってない!」
「食欲を損ないます」
「では、青いそうめん!」
「着色料に頼りすぎです」
「青いオムライス!」
「卵を青くする理由がありません」
店長さんは模造紙に書いた「青いカレー」を悔しそうに二重線で消した。
「料理メイドは夢がないわね」
「食べ物ですから」
執事さんが遠慮がちに手を挙げた。
「青髪の方は、落ち着いた印象でした。冷たいスープや、透明感のあるゼリーなどはどうでしょう」
料理メイドがうなずく。
「悪くありません。青色そのものではなく、器や盛り付けで涼しさを出せます」
「さすが執事さん!」
先輩メイドの一人が拍手する。
執事さんは少し得意そうに微笑んだ。
「接客で相手の印象を観察するのは得意ですので」
店長さんが目を輝かせた。
「では、そのスープを作ってみて!」
「え?」
「今すぐ!」
執事さんは固まった。
料理メイドが静かに鍋を差し出す。
「どうぞ」
「いや、私は提案をしただけで、調理担当では……」
「料理ができないのですか?」
アルバイトメイドたちの視線が集まる。
執事さんは咳払いをした。
「できないわけではありません」
「以前、ゆで卵を爆発させましたよね」
料理メイドが言う。
「あれは電子レンジとの相性が悪かっただけです」
「フライパンでパンケーキを炭にしたこともあります」
「火力が予想以上だったのです」
「紅茶に塩を入れたことも」
「あれは容器の表示が分かりにくかったんです!」
店内に笑い声が広がった。
執事さんは耳まで赤くしながら腕を組む。
「私は接客担当です。適材適所という言葉があります」
「では、料理は私が組み立てます」
料理メイドは模造紙の横に、新しい紙を置いた。
「三人の印象を、色だけでなく食感や構成で表現しましょう」
料理メイドはまず、青いペンを取った。
「青髪のリーダーは、冷静さと清涼感。ただし、店長さんに圧倒される柔らかさもある」
「圧倒したのは私ね!」
「反省してください」
料理メイドは続けた。
「透明なジュレを使った冷製スープ。中には白い野菜と、青い器に映えるハーブを入れます」
「青い器なら自然ですね」
執事さんがうなずく。
次に料理メイドは紫色のペンを取った。
「紫髪のモデル志望は、スポーティーで鋭い。最初は偏見があったが、気に入ったものは素直に認めた」
店長さんが口を挟む。
「紫芋を山盛りにしましょう!」
「甘味に限定されます」
「紫キャベツ!」
「可能です」
店長さんが勝ち誇った顔をする。
料理メイドは紙に書き込んだ。
「紫キャベツとベリーの酸味を使ったサラダ。見た目は華やかですが、味は引き締めます」
「モード系ですね」
黒髪のアルバイトメイドが言った。
「料理がモード系って、どういう意味?」
別のアルバイトメイドが首をかしげる。
紫色の盛り付け写真を想像しながら、料理メイドは答えた。
「余計な装飾を減らし、形と色の対比を強くするということです」
「それ、紫髪の子が喜びそう!」
アルバイトメイドたちが声を上げた。
最後に、料理メイドは茶色のペンを取った。
「先輩は、メイドカフェ文化を理解していて、三人の中では一番店との距離が近い」
「そして執事さんのファン!」
店長さんが力強く付け加える。
執事さんが困ったように笑う。
「そこはメニューに必要ですか?」
「重要よ!」
店長さんは勢いよく模造紙に、執事服の形をした大きなパンの絵を描いた。
「執事さん型ハンバーグ!」
「なぜ私が焼かれるのですか」
「では、執事さんの顔を描いたオムライス!」
「描くのは誰ですか」
店長さんとアルバイトメイドたちの視線が、執事さんに集まった。
執事さんは首を横に振った。
「無理です」
「接客は得意でしょう?」
「絵を描くことと接客は別です」
料理メイドは少し考えた。
「先輩の要素は、安心感と親しみやすさで表現します。焼きたての小さなパンを添えましょう」
「普通すぎない?」
店長さんが不満そうに言う。
「執事さんが客席で仕上げれば特別になります」
「私が?」
「バターを塗るだけです」
「それならできます」
料理メイドは冷静に続ける。
「ただし、三人分を別々に出すと、コラボとしてまとまりがありません」
店長さんは腕を組んだ。
「一皿にまとめると言ったでしょう?」
「無理に一皿へ詰めると、料理の方向性が崩れます」
「でも、ファッションショーなのよ。華やかさが必要!」
店長さんと料理メイドが向かい合う。
アルバイトメイドたちは二人の間を見比べた。
店長さんの案は大胆で派手だが、料理として成立しにくい。
料理メイドの案は完成度が高いが、少し落ち着きすぎている。
そのとき、執事さんがテーブルの上のファッションショー資料を手に取った。
ページには、ランウェイを歩くモデルたちの配置図が載っている。
「一皿ではなく、一つのコースにしてはどうでしょう」
全員が執事さんを見る。
「コース?」
「はい。ファッションショーでは、一人のモデルだけでなく、何人ものモデルが順番に登場して、全体で一つのテーマを見せます」
執事さんは資料をテーブルに広げた。
「料理も同じように、三つの小さな料理を順番に出します。それぞれの学生モデルを表現しながら、最後に三人が一緒になるような一品を出すんです」
料理メイドの目がわずかに細くなる。
「構成としては理にかなっています」
店長さんも身を乗り出した。
「最後に全員集合ね!」
「そうです。コース全体をランウェイに見立てます」
アルバイトメイドたちが一斉に盛り上がった。
「いいですね!」
「それなら写真も撮りやすい!」
「一品ずつ衣装みたいに見せられる!」
店長さんは模造紙の中央に、大きく新しい題名を書いた。
――真夏のランウェイ・コース!
「決まりね!」
「まだ内容が決まっていません」
料理メイドが言う。
「名前が決まれば半分完成よ!」
「違います」
その後、会議はさらに続いた。
青髪ボブ子ちゃんをイメージした一皿目は、透明感のある冷製スープ。
青いガラスの器に、冬瓜、白いトマト、薄く切ったきゅうり、レモンのジュレを浮かべる。
名前は、
「ブルー・リーダーの涼風ジュレ」
紫髪ウルフちゃんをイメージした二皿目は、紫キャベツ、ビーツ、ブルーベリー、香草を使った小さなサラダ。
黒い皿に直線的に盛り付け、酸味のあるドレッシングで鋭さを出す。
名前は、
「ウルフ・モードの紫彩サラダ」
先輩をイメージした三皿目は、焼きたての小さなパンと、香りのよいハーブバター。
執事さんが客席でパンを割り、バターを添える演出にする。
名前は、
「先輩のお気に入り 執事さんの焼きたてブレッド」
「その名前、恥ずかしくありませんか?」
執事さんが尋ねる。
「ファンは喜ぶわ!」
店長さんが答える。
「先輩本人の許可を取ってください」
料理メイドが釘を刺す。
そして最後の一品。
三人の要素を一つにまとめた、夏野菜の冷製パスタ。
青い器。
紫キャベツとビーツの彩り。
執事さんが客席で仕上げる、レモンとハーブの香り。
中央には、三色の野菜をリボンのように飾る。
料理メイドが完成図を描きながら言った。
「これなら三人の個性がぶつからず、一皿でまとまります」
店長さんが満足そうにうなずく。
「名前は――」
全員が店長さんを見る。
「学生モデルとメイドカフェの、ドキドキ真夏のキラキラお帰りなさいませスペシャル・レインボー・プリンセス冷製パスタ!」
店内が静まり返った。
料理メイドが言う。
「却下です」
「どうして!」
「注文を受ける前に客が疲れます」
「では、略してドキ夏パスタ!」
「意味が分かりません」
アルバイトメイドの一人がおそるおそる手を挙げた。
「『サマーランウェイ・パスタ』はどうですか?」
全員が黙った。
料理メイドがうなずく。
「簡潔です」
執事さんも微笑む。
「ファッションショーとの関係も伝わります」
店長さんは少し悔しそうだったが、最後には大きく丸をつけた。
こうして、メイドカフェ「リリィ」の夏ファッションショー・コラボメニューは決まった。
### 真夏のランウェイ・コース
第一幕
「ブルー・リーダーの涼風ジュレ」
第二幕
「ウルフ・モードの紫彩サラダ」
第三幕
「先輩のお気に入り 執事さんの焼きたてブレッド」
フィナーレ
「サマーランウェイ・パスタ」
料理メイドは試作用の冷製パスタを完成させ、テーブルの中央に置いた。
アルバイトメイドたちが歓声を上げる。
執事さんは慎重にレモンを絞った。
「これくらいなら、私にもできます」
「絞りすぎです」
料理メイドが即座に止めた。
「少ししか絞っていません」
「皿の半分にかかっています」
「あっ」
店長さんは、その様子を見ながら満足そうに笑った。
「完璧ね!」
「どこがですか」
閉店後の店内に、再び笑い声が広がる。
学生モデルたちが知らないところで、夏ファッションショーとのコラボは、すでに料理という形でも動き始めていた。
店長さんは完成した模造紙を、店内で一番目立つ壁に貼った。
その一番下には、赤い文字で大きく書き足されている。
――試食会には学生モデルの皆さんをご招待!
料理メイドが振り返った。
「店長さん。まだ大学へ連絡していません」
「明日の朝、一番にするわ!」
「営業時間前にしてください」
「もちろん!」
その返事を聞きながら、執事さんとアルバイトメイドたちは顔を見合わせた。
また店長さんが、話を大きくしようとしている。
けれど誰も止めなかった。
少しだけ大変で、かなり騒がしくて、それでも面白い夏になりそうだったからだ。
ひとまず<完>
ちちぷいユーザー企画【夏ファッションショー】を開催します。
開催期間
2026/8/3 0:00~2026/8/6 23:59
詳細↓
https://www.chichi-pui.com/events/user-events/d72cfe6b-5da0-4f8e-a9ba-95db041bf672/
呪文
入力なし