キッチンに、甘い香りが広がる。
「今日は柏餅。季節感は大事だよね」
白衣のまま手際よく包んでいく理久。見た目は完璧、むしろ売り物以上。
「普通に美味しそう…珍しく安心できるやつ?」
柚月がほっとした顔で覗き込む。
「“普通”じゃつまらないでしょ」
「はい不安再来!」
数分後、蒸し上がり。
「はいどうぞ」
差し出された柏餅を、恐る恐る受け取る柚月。
「……見た目は完全に無害なんだけど」
一口、ぱくり。
もぐもぐ――
「ん、美味しいじゃん!ちゃんと――」
その瞬間。
ポンッ!
隣の柏餅が小さく弾け、中の餡がふわっと飛び出す。
「!?」
「当たりだね」
「当たりって何!?」
思わず立ち上がる柚月。
「一個だけ“加熱で内部圧が上がる構造”にしてみた」
「ロシアンルーレットにするな!」
しん、と静まるキッチン。
二人の前には、残りの柏餅。
「……どれ?」
「さあ?」
柚月はゆっくり後ずさる。
「理久姉ちゃん、先にどうぞ」
「実験者は観測が優先だから」
「都合よく逃げないで!?」

呪文

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