荒させはしないわ！ わたしのステージ！

スポットライトが降り注ぐ、静寂に包まれたステージ。　だが、喝采はない。
そこにあるのは、異形の怪物たちの残骸と、戦い終えた少女の静かな息づかいだけ。
青いコスチュームは血と埃にまみれ、切れ傷から覗く白い肌が、戦いの激しさを物語っていた。
彼女は、孤高のヒロイン、ブルーサンダー――佐倉ミナ。

メガネの奥、深い藍色の瞳は、戦い疲れた静けさをたたえていた。

「みんな…見ていてくれた？」

乾いた唇が、かすかな音を紡ぐ。
ミナは、空を見上げ思い描いた。
胸に込み上げるのは、悲しみ、喪失感、そして、彼らを守れなかったという自責の念。

ミナは人知れず、この街を守る戦士だ。人々は彼女の存在を知らない。
いや、正確には、都市伝説のように囁かれる「蒼き守護神」の存在を噂している者もいる。
ミナの正体を知る由もなく彼らはネット上で、彼女の活躍を応援し彼女に勇気を与えてくれる、数少ない理解者だった。

「みんな…ありがとう」

ミナは、見えないファンたちに感謝の言葉を呟いた。
彼らの応援が、ミナの孤独な戦いを支えている。
そして、もう一つの支えが、かつての仲間たちの想い。
彼らの犠牲を無駄にしないためにも、ミナは戦い続けなければならない。

今宵の敵は、秘密結社「シャドウギア」が送り込んだ最強の怪人、デストラクターだった。
圧倒的なパワーと残忍な攻撃の前に、ミナは何度も窮地に追い込まれた。
仲間たちが生きていれば…そんな思いが頭をよぎる度に、ミナは歯を食いしばり、自らを奮い立たせた。

そして、ついに、渾身の雷撃「サンダーブラスト」を放ち、デストラクターを撃破したのだ。
だが、勝利の代償は大きかった。コスチュームはズタズタになり、体にも無数の傷を負っている。
それでも、ミナは立ち上がり続ける。この街には、彼女が守らなければならない人々がいる。
ファンがいる。そして、今は亡き仲間たちの想いがあるのだから。

「この街は…私が守る」

力強い決意を胸に、ミナは静かに夜の闇に消えていった。
明日もまた、彼女は普通の高校生として学校に通い、そして、夜になればブルーサンダーとして、孤独な戦いを続けるだろう。
蒼き閃光が、この街の平和を守る限り、彼女の戦いは決して終わらない。