『ちょっとあんたら、越夜隊だろ?
そっちの若い子たち連れて、今からあの無法地帯を
越えるのはオススメしないよ〜。
提案なんだけどここから近いし安くしとくからさ
うちんとこ泊まっていきなよ!』
陽が傾き始めた頃、出立が少し遅れてしまった
私たちに声をかけてきたのは、食料品の買い出しに
「フラットランド」から帰ってきた小さな宿屋の主だった。
…仕方がない。情報収集が難航して帰還できないという失態を
犯したが、安全に皆を連れ帰るのもリーダーとしての大切な任務だ。
ここは気さくな宿屋の主人に感謝しよう。
夕風が吹き始めた宿屋の屋上に上がってみる…。
埃っぽい荒廃した街とそこで生き抜こうとする
たくましい人々が目に飛び込んできた。そして視線を上げると
あの失われた時代と変わらぬ美しい夕日が…。
心奪われて佇む私の耳に階下で夕飯の準備が
できたよと宿の主の呼ぶ声がした。