本日のランチ
チキン南蛮定食
――甘酢とタルタル、その距離感がすべて
強い料理ほど、丁寧さが要る。
チキン南蛮は、その典型だと思う。
揚げ物に甘酢、そこへタルタル。味の足し算が重なれば、簡単に暴れる。
目の前の皿は、まず見た目が落ち着いている。
タルタルは山盛りだが、白さが重く見えない。刻み玉ねぎの粒が立ち、空気を含ませているのが分かる。
その下で鶏は照りをまとい、甘酢の艶がほどよい。
まずは端の一切れを、タルタルを避けて口に入れる。
衣は厚くない。噛むとすぐほどけ、鶏の肉感が出てくる。
甘酢は酸が立ちすぎず、喉に残らない。ここで「大丈夫だ」と思う。
次に、タルタルを少し絡める。
酸味の角が丸くなり、今度はコクが前に出る。
この定食の良さは、甘酢とタルタルが喧嘩しないところにある。
どちらかが勝つのではなく、交互に役割を渡している。
キャベツの存在が、想像以上に大きい。
濃い味の合間に挟むと、口の中が整い、次の一口が新しくなる。
白ごはんは言うまでもなく進む。だが、進みすぎて疲れない。
これは、揚げの油切れと、ソースの濃度がきちんと設計されている証拠だろう。
定食とは、主菜だけで完成しない。
味噌汁と小鉢、香の物が、強い主菜に“逃げ道”を作る。
チキン南蛮定食は、料理というより「設計図」を食べる定食だと感じた。
■ 締めの一文(編集後記的まとめ)
足し算の料理ほど、引き際が難しい。
チキン南蛮は、店の設計力が最も分かりやすく出る一膳である。
■ 次回予告(1/25掲載予定)
次回の食彩探訪は、
「カキフライ定食 ― 海のミルクの扱い方」。
揚げ時間は短く、しかし中心は熱く。
衣の軽さと、身の瑞々しさの両立が問われる。
次回もまた、揚げ物の誠実さを確かめたい。
呪文
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