孤独

ぽつんと、ひとり。
私はただ、そこに静かに佇む。

とある森の奥深くにある館。
人は誰もいない。
たくさんの人形があるだけの不思議な洋館。
この館には誰もいない。


―――いつの頃からだろうか…。
私は自我に目覚めていた。
初めはうっすらとお日様の光を感じる程度だった意識も、日が経つにつれ視界がはっきりとしていきゆっくりと身体を動かす事もできた。

きりきりきりきりと、身体を動かす度に関節が鳴くが、自分ではどうすれば良いのかもわからない。
痛みはない。ただ、自分の身体から鳴る音が私は大嫌いだった。この音は…私の胸の奥に嫌に響くから。

この館には誰もいない。

私は軋む身体をゆっくりと動かしながら、たくさんある人形を一体ずつ胸元に抱きしめる。
どうやら自我があるのは私だけらしく、他のみんなは普通の人形だ。私は退屈しのぎに彼ら彼女らに名前をつけて会話をしていく。

「こんにちは、アニー。今日はいい天気だよ！」
「ビリーはいつも元気だね♪」
「キャサリンのお洋服可愛いね♡」
「デヴィッド…エリックと喧嘩したの？」

もちろん人形が応えるはずもないので全て私のひとり遊びだ。


この館には誰もいない。
この館には誰もいない。
この館には誰もいない。
この館には誰もいない。


「…どうして…誰も応えてくれないの…」
ひとり小さく呟く。


どうして私は自我に目覚めてしまったのだろう？
カミサマはどうして私に『心』を…。

瞳から熱いモノが溢れて流れていく。


私は…。
未来に絶望していた。

※2025年9月6日のGRYPHONデイリーランキング4位に入りました！🎉
※2025年9月6日のデイリーランキング31位（呪文あり）に入りました！🎉
※2025年9月6日のちちぷい生成機能デイリーランキング15位に入りました！🎉