本日のランチ

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『食彩探訪』11月号特集

「11月22日　冬がくれる贈りもの──カキフライ定食」
文・撮影：田嶋 達郎（グルメ記者）


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木枯らしが少し強く吹いた昼下がり。
冷えた指先をさすりながら店の扉を開けると、
ふわりと漂う揚げ油の香ばしい匂いが、まるで“こちらへどうぞ”と手招きしているかのようだった。
今日の日替わりは、冬の味覚の代表格──カキフライ定食。

主皿のカキフライは、丸々とした身を包む黄金色の衣がサクッと立ち上がり、
ひとつ箸で持ち上げただけで、その軽やかな音が聞こえてきそうだ。
熱々を頬張れば、まず衣が香ばしく弾け、
その直後に、海の香りと濃厚な旨みが一気に押し寄せる。
蒸し牡蠣では味わえない、フライならではの“凝縮したミルキーさ”がたまらない。

添えられたタルタルソースは、レモンの酸味が効いた爽やかな仕立て。
濃厚なカキフライにも、すっと寄り添う優秀な相棒だ。
山盛りのキャベツはシャキッとしていて、口の中を軽やかに整えてくれる。

味噌汁は豆腐とわかめ。やさしい風味が、揚げ物の余韻と調和する。
さらに小鉢のほうれん草のおひたしが、冬の青味をほんのり感じさせ、
漬物のパリッとした塩気が全体を締める。
茶碗の白ごはんは、もちろん炊きたて。
フライとタルタルを一緒にかき込めば、気づけば“幸せのため息”が漏れていた。

冬の海がくれる贈りものを、
こんなにも気取らず、しかし丁寧に味わわせてくれる店は貴重だ。


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◆次回予告

11月23日：熱々とろとろ──「牛すき焼き風煮定食」を予定。
甘辛い煮汁と湯気の立つ鍋の香り。そのあたたかさに、また会いにいこう。

──今日も、いい昼ごはんだった。