「5回目の花火大会"秒で泣いた"友達卒業宣言」ショートストーリー付き

「また今年も友達として隣にいる。5回目の花火大会、私はいつまで"いい人"でいるんだろう。」
「でも今夜、最後の花火が私たちの関係を変えてくれた。」

---5回目の花火大会---


今年も隣に座っている彼との距離は、去年と変わらない。

「花火、きれいだね」

彼がいつものように呟く。私も「うん」と返す。この会話も5回目だ。


大学1年から続く花火大会デート。でも私たちは恋人じゃない。いつも「友達として」参加している。

「いい人どまり」って、こういうことなんだと思う。告白しても「友達でいよう」って言われて、でも諦めきれずに毎年この場所に来てしまう。

今年こそは違う関係になりたかった。でも、もう無理かもしれない。


浴衣姿の彼の横顔を見つめながら、私はため息をついた。友達以上恋未満の関係に、もう疲れてしまった。

---偶然の出会いが教えてくれたこと---


「あ、高校の同級生だ」

突然、彼が手を振った。向こうから歩いてくるのは、綺麗な女性と手を繋いだ男性。

「結婚したんだ。おめでとう」

彼が笑顔で祝福している。その時、私の心に小さな変化が起きた。

「俺も頑張らなきゃな」

彼が小さく呟いた。今まで聞いたことのない声のトーンだった。

花火の音に紛れて、彼が何かを決意しているのを感じた。もしかして、今夜は違うかもしれない。

でも期待するのは怖い。5回も同じことを繰り返してきたから。

「今年で最後かもしれないね、この花火大会」

彼の言葉に、私の心臓が止まりそうになった。

---最後の花火が響いた瞬間---

「実は、ずっと言いたいことがあった」

フィナーレの花火が始まった時、彼が振り返った。

「君とは友達でいたかった。だって、恋人になって終わるのが怖かったから」

え？

「でも、今日気づいたんだ。友達のままでいる方が、君を失う可能性が高いって」

花火の光で、彼の真剣な表情が見えた。

「君が好きだ。友達じゃなくて、恋人として」

5年間待ち続けた言葉だった。

「秒で泣いた」なんて言葉があるけど、本当に涙が止まらなかった。


「私も、ずっと好きだった」


やっと言えた。5回目の花火大会で、やっと。

空に響く花火の音が、私たちの新しい始まりを祝福してくれているみたいだった。

---恋人として迎える来年の夏---


「来年の花火大会は、恋人として来ようね」

彼の手を握り返しながら、私は頷いた。

5年間の「友達以上恋未満」がやっと終わった。諦めそうになった時もあったけど、待っていて良かった。

彼も私も、準備ができるまで時間が必要だったんだと思う。

友達期間があったからこそ、今の幸せがある。

来年の夏が、今からもう楽しみだ。