【夏色バス】

風は麦わら帽子を揺らしながら私の耳に蝉の声を運んできた

白いワンピースの裾をつまみ、舗道に差す木漏れ日を踏みしめる

左手にはペンキの剥がれた標識

読み取れないその文字も、いまの私には愛おしく思えた

遠くから、エンジンの音が聞こえてきた

夏色のバスが、まるで海の向こうから泳いでくるかのように近づいてくる

ふと運転手と目が合った

微笑みを返すように、私は帽子のつばを押さえる

ただそれだけの瞬間に、なぜだろう、胸の奥がきゅっと鳴った

きっとこれは、物語のはじまり

素敵な夏が待っている

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