番外編『猫のぬいぐるみ』

使用したAI ChatGPT
今回も番外編の為、時系列がズレています!😊
拠点も整い生活が安定してきた、ちょっと未来の室井ちゃんです。


番外編『猫のぬいぐるみ』


夜、嵐が来た。

風が唸り、木々がざわめく音が、途切れることなく耳に入り続ける。
焚き火は何度も消えかけ、そのたびに薪を足し、火を守った。

雨粒が頬に当たり、冷たい。

「……」

声を出そうとして、やめた。
この島では、声を出しても返ってくるものが何もない。

今までは、そんなことを考える余裕もなかった。
水を探して、火を起こして、寝床を作って――
生きることに必死で、心の隙間なんて感じる暇はなかった。

けれど。

水が確保できて、拠点が整って、
「明日も生きられる」と思えたその夜。

嵐の音に混じって、
胸の奥から、別の音が聞こえてきた。

――ひとりだ。

誰もいない。
呼んでも、返事はない。
この島には、自分しかいない。

焚き火を見つめながら、膝を抱える。
炎の揺らぎだけが、時間を刻んでいる。

「……大丈夫……」

そう呟いた声は、風にすぐかき消された。

長い夜だった。
眠ったのか、起きていたのかも分からないまま、
嵐はいつの間にか去っていた。

翌朝。

雲の切れ間から光が差し込み、
浜辺には静かな波音が戻ってきていた。

体を動かすついでに、砂浜を歩く。
嵐の後は、何かが流れ着くことがある。
今回は、何か使える物が漂着してるといいな…。

そう思って、何気なく足元を見た時――
それは、転がっていた。

最初は、ただの布切れだと思った。
近づいてみて、ようやく形が分かる。

猫のぬいぐるみだった。

色は褪せ、所々ほつれていて、
片方の耳は少し裂けている。
海水を吸って重く、砂まみれだ。

「……」

思わず、しゃがみ込んでいた。

拾い上げて、しばらく見つめる。
可愛いとも、綺麗とも言えない。
正直、ゴミと言われてもおかしくない見た目だ。

……なのに。

「……流されてきたんだね」

気づけば、声をかけていた。

自分で言って、自分で驚く。
返事なんて、あるはずがない。

それでも、手が離れなかった。

「……嵐、すごかったよ」

意味のない言葉が、自然に口をつく。

少し間を置いて、苦笑する。

「……なにしてるんだろ……」

そう思いながらも、
ぬいぐるみを砂の上に戻すことはできなかった。

代わりに、ポンポンと砂を軽く払ってあげる。
濡れた体を、陽の当たる場所に置く。

「……今日は、天気いいから……乾くよ」

また、話しかけている。

返事はない。
でも、不思議と胸の奥が、少しだけ軽くなった。
 
結局、収穫が無いままぬいぐるみを拠点に持ち帰っていた。

「……名前……つけるのは……やめとこう」

そう言いながら、
結局そのまま傍に置いてしまう。

焚き火のそば。
寝床の端。

そこに、ぬいぐるみがあるだけで――
夜を思い出しても、昨日ほど怖くはなかった。

「……一緒に、生き延びようね」

ぽつりと呟いて、
自分で小さく笑った。

猫のぬいぐるみは、何も言わない。
助けてもくれない。

それでも。

この島で、初めて
「誰かがいる」ような気がした。

呪文

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