夏祭りの銀狐様

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かつてのお尋ね者だった大婆銀狐が銀狐神社の土地神となってから800年が経つ。
最初は人口500人ほどの稲葉村は現在、稲葉市となって人口30万人を超える地方産業中核都市となった。
河川に囲まれているのに水害被害も少なく、飢饉や疫病の蔓延も他の町と比べると人的損害はかなり少なかった。
特に大戦末期、複数の軍需工場があった稲葉市には20回以上も空襲があったにも関わらず、街も軍需工場も終戦まで被害はなかった。
しかし終戦間際には物資がなく、工場は開店休業状態ではあったが・・・。

高台にある銀狐神社は夏祭りだった。人口が増えるにつれどんどん規模が大きくなり、花火も上がるようになった。
高台の神社の縁側にたたずむ大婆銀狐は、800年の時間を思っていた。
そう、この稲葉市の繁栄は大婆銀狐の妖力が大きい。
最も、ここ100年は人間の力が強くなったので出番はあまりないが、空襲回避の濃霧は彼女の力であった。
空襲のたびに発生する濃霧、それは爆撃機編隊と一緒に動くという怪奇な濃霧であったと言う。

大婆銀狐は、配下が買ってきた沢山の「たこ焼き」を肴にビールを飲む。炭酸が心地よい。
「旦那様、見て下され・・・良い街になりましたぞ・・・」
大婆銀狐は、4本目のビールを片手に呟く。

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