勝利のトングカチカチ

使用したAI Gemini
休日の昼下がり。柔らかな陽光が差し込む兄の部屋は、いつになく片付いていた。

「うわ、すっげー綺麗になってる! これ、全部お前がやってくれたの?」

部活から帰宅した兄は、見違えるほど整頓された自室を見て目を丸くした。短めの茶髪が汗で少し濡れており、スポーツバッグを肩にかけた姿は、絵に描いたような爽やかな好青年だ。

部屋の中央には、儚げな雰囲気の妹が佇んでいた。色素の薄い肌に、日本人形のように艶やかな黒髪が対照的だ。彼女は少し大きめのエプロンをつけ、手には金属製のトングを持っていた。

「……うん。お兄ちゃん、最近忙しそうだったから。少しでも手伝えたらって思って」

妹は伏し目がちにそう言い、儚げに微笑む。その様子は、病弱ながらも健気な妹そのものだった。

「いやいや、ありがとうだけどさ! お前、体弱いんだから無理すんなっていつも言ってるだろ? 掃除なんてホコリも立つし、体調崩したらどうすんだよ」

兄は屈託のない笑顔で礼を言いつつも、すぐに心配そうな表情を浮かべて妹に歩み寄る。彼は本気で心配しているのだ。妹がこの部屋で、通常の掃除とは全く異なる「発掘作業」を行っていたことなど、露ほども疑っていない。

(……今日の収穫。コンビニのレシート三枚。対象店舗の特定完了。レシートAに記載された『アイスカフェラテ二つ』の項目を確認。購入時刻は昨日15時42分。同時刻、兄の隣にいた人物の特定を急務とする。それから、抜け落ちた髪の毛数本と、使い終わった付箋……全て、聖遺物ファイルへ)

妹の脳内では、冷静かつ熱狂的な情報処理が行われていた。トングで摘み上げられた「ゴミ」たちは、彼女にとっては至上の宝物であり、兄の行動を把握するための重要な証拠品でもあった。

そんな彼女の内心などつゆ知らず、兄は目の前の健気な妹への愛おしさで胸を一杯にしていた。

「でもまあ、マジで助かったよ。サンキュな」

兄は自然な動作で、妹の頭にポンと手を置いた。そして、ふわふわと優しく撫でる。それは、完全に「頑張った妹を労う兄」の、下心のない純粋な親愛の情表現だった。

その瞬間。

妹の時間が止まった。

「…………ぁ」

兄の大きく温かい手のひらの感触が、頭頂部から全身を駆け巡る。彼女の白い頬が、朱を通り越して熱を帯びた。

(お兄ちゃんが、撫でてくれてる。私の頭を。お兄ちゃんの手の温度。お兄ちゃんの匂い。お兄ちゃんの、私への感謝。ああ、ああ、ああ――!)

妹は恍惚の表情を浮かべ、うっとりと目を細めた。兄に見せる「大人しい妹」の仮面が、喜びのあまり少しだけ剥がれ落ちそうになる。

カチ、カチ、カチカチカチ。

静かな部屋に、奇妙な金属音が響いた。

「ん? どうした、そのトング鳴らして」

「……ううん、なんでもない。えへへ、お兄ちゃんに褒めてもらえて、嬉しいなって」

妹は両手で握りしめていたトングを、無意識のうちに高速で開閉させていたのだ。溢れ出した歓喜が、指先の痙攣となって現れた結果だった。

兄はその音を気にも留めず、「そっかそっか、よかった」と、もう一度わしゃわしゃと頭を撫でてから、着替えのためにクローゼットへと向かった。

その背中を見つめながら、妹はまた、カチカチカチ、と小さくトングを鳴らす。

その目は、病的なまでに熱っぽい光を宿していた。今日の「聖遺物」の収穫と、この至福の報酬。彼女にとって、これ以上の休日はなかった。


POLOLLIPOP!様の企画 #勝利のトングカチカチ
https://www.chichi-pui.com/events/user-events/59d4edd5-e44e-404a-97e5-f887250d1ac1/

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