この1,2年で、多くの仲間たちが命を落としました。
私が終生仕えるはずだったお方の死は、あまりにも突然で。
私はその後の混乱に少なからず加担した身です。 
……先に行った仲間たちには後で地獄に詫びに行きましょう。
それまで、お茶を淹れながら余生を過ごそうと思ったのです。
 
……正直、一目惚れでした。
ハーシーくんとの共闘作戦中に立ち寄った山合いのその里は、あまりにも美しくて。
でも、とても貧しい営みで。
姉ナントカさんでしたっけ?
公家気取りのあの方がこの地に固執した理由が、分かった気がします。
思ったより強かったですから、姉ナントカさん。
 
隠居はやめました。
私は残りの人生を、この営みを守るために捧げます。
まずは平地を探して、そこに城下町の整備を。
山林は豊富なのでメイン産業は林業に。
鉱山資源もありそうですね?
ええ、頑張ってみせますとも。
この美しい営みを、世界中の人々に知ってほしいのですから。

※  ※  ※

うちの子(の元ネタになった人物)と白川郷は、少なからず縁があります。
一度は引退の素振りを見せたのに結局そのまま戦場に舞い戻った理由――流石に本人の述懐は残っていないので推察するしかないのですが……
「飛騨高山の街並み、特に白川郷を気に入ってしまったから」
もしそうだったらロマンチックだなぁと解釈したのです。
  
その約150年後、白川郷は幕府すら動かす大変な騒動に巻き込まれてしまいます。
責任を負わされる形で金森家は領地没収、他にも多数の役人や神職が死罪を含めた厳しい処分を下されました。
同時期には同地域で大規模な一揆も発生。
藩も幕府もまともな対処ができず社会システムの限界が露呈し始めた中で、事態の収拾に奔走した一人の人物が歴史の表舞台に上がります。
 
――――その人物の名前は、田沼意次と言います。

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