472 林檎を齧るスチームパンクの子
誰に呟いたわけでもなく、私はポツリと言った。
前回の冒険で手に入れたお宝を売って得たお金はもう底を尽き掛けている。
軽くなってきた財布が寂しさを助長させていた。
トレジャーハンターではなく、真っ当に働けば良い?
そんな指摘はごもっともだ。
私が生業としている職は、例えベテランであっても発見がなければ次の日には浮浪者になっているのは珍しくもない。
命の危険なんて冒険の中ではいつものことだ。
で、あればなぜ、この仕事を続けるか?
多分、私は何もかも見たいんだろう、と思う。
体験しなければ、文字だけでは何も分からない。
葡萄は実際に食べてみなきゃ酸っぱいかどうかさえ分からない。
私はシャクリと林檎を齧った。
「…ん、甘い」
私の頬は少しだけ綻んだ。
呪文
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