私の一閃。ごうっ、と、空間が哭く。
唸りをあげて疾る衝撃。
が、ヤツは動じる事なくそれを躱した。
壁や床に装飾された赤い布が替わりに舞い散る。
「随分と、『赤』がお好きな様で…」
挑発の意を込めてニヤリと微笑ってやる。
「この『赤』は我々にとって―――」
「私も好きだ。とても素敵な色彩だよ」
ヤツの言葉を遮る様に続ける。
ヤツを睨みながら。
「だから私はこの『赤』を支配する」
宙に舞う赤い布。それが次第に燃え始める。
始めは小さな火種。それらが炎と化していく。
「炎化纏身(エンカテンシン)」
一瞬にしてこの場にある全ての『赤』から炎が爆ぜる。無尽蔵に、永続的に。
ヤツはさすがに驚いた様で、困惑の表情を初めてみせた。
「この『赤』は神聖な色…なんだろう?」
私は自分の言葉に冷たく嘲笑う。
激しく燃える炎を纏いながら。