本日のランチ
使用したAI
ChatGPT
食彩探訪|胡麻味噌坦々鍋定食|田嶋達郎
木製テーブルに置かれた瞬間、湯気がまず目に来る。土鍋の縁から立ち上がる白い蒸気に、胡麻の香ばしさと味噌の甘い匂いが混ざり、そこへラー油の赤い香りがふっと刺さる。担々の“熱”を鍋で受け止めると、辛さは刺激ではなく、体をほどく温度になる。見た目の一枚で、もう腹が鳴る。
スープをひと口。最初に胡麻のコクが舌を包み、次に味噌の丸みが広がる。そこへ遅れて辛味が追いかけ、花椒の痺れが軽く残る。尖らせない、だがぼやけさせない。濃厚なのに、どこか品がある。豆乳が入っているのだろう、口当たりが柔らかく、鍋なのに“重たさ”が前に出ない。
中央の肉味噌が、この鍋の心臓だ。ひき肉の粒が噛むたびに旨みを出し、スープの中に少しずつ溶けていく。時間とともにスープが完成していくのは、鴨南蛮の脂と似ている。最初は胡麻味噌、途中から“肉味噌胡麻味噌”になる。その変化が飽きを作らない。
豆腐は角を残し、崩れずに旨みを抱えている。ひと口噛むと、熱いスープがじゅわっと染みて、辛味の中に豆の甘さが見える。白菜はくたっと甘く、ねぎは香りを立て、ニラの青い匂いが出口を作る。きのこが入ると、食感が増えて鍋が単調にならない。濃厚な鍋ほど、こういう“噛む要素”が効く。
途中でラー油を少し足す。表面に赤い輪が広がり、香りが一段立つ。花椒をひとふり。痺れが加わると、後味が締まり、また次の一口が新しくなる。担々は足し算の料理だが、鍋にするとその足し算が柔らかくなる。だから、最後まで食べ疲れしない。
そして、定食としての醍醐味は小鉢と白飯にある。漬物やナムルの塩気が、濃厚さの間に“空白”を作る。白飯は、鍋のスープを回収するための器だ。終盤、スープを少し残してご飯をひと口だけ入れる。胡麻味噌の旨みが米に絡み、肉味噌の粒が残っているとさらに強い。卵を落とせば、辛味が丸くなり、〆が“雑炊”の顔になる。最後の一口まで、きちんと設計されている。
締め
胡麻味噌坦々鍋定食は、担々の熱を、胡麻と味噌のコクで包み込んだ“濃厚なのに丸い”鍋だった。肉味噌が時間とともにスープを育て、豆腐と野菜が辛味の出口を作る。追い飯まで含めて、最後まで旨い。寒い日に心と体を同時に温める、頼れる一膳だった。
次回予告
次回は、鍋の濃厚さから一転して、香ばしい“焼き”と甘辛い照りへ。皮はパリッ、身はふっくら。タレが指先に残る――。次はうなぎ蒲焼き定食を取り上げようと思う。
木製テーブルに置かれた瞬間、湯気がまず目に来る。土鍋の縁から立ち上がる白い蒸気に、胡麻の香ばしさと味噌の甘い匂いが混ざり、そこへラー油の赤い香りがふっと刺さる。担々の“熱”を鍋で受け止めると、辛さは刺激ではなく、体をほどく温度になる。見た目の一枚で、もう腹が鳴る。
スープをひと口。最初に胡麻のコクが舌を包み、次に味噌の丸みが広がる。そこへ遅れて辛味が追いかけ、花椒の痺れが軽く残る。尖らせない、だがぼやけさせない。濃厚なのに、どこか品がある。豆乳が入っているのだろう、口当たりが柔らかく、鍋なのに“重たさ”が前に出ない。
中央の肉味噌が、この鍋の心臓だ。ひき肉の粒が噛むたびに旨みを出し、スープの中に少しずつ溶けていく。時間とともにスープが完成していくのは、鴨南蛮の脂と似ている。最初は胡麻味噌、途中から“肉味噌胡麻味噌”になる。その変化が飽きを作らない。
豆腐は角を残し、崩れずに旨みを抱えている。ひと口噛むと、熱いスープがじゅわっと染みて、辛味の中に豆の甘さが見える。白菜はくたっと甘く、ねぎは香りを立て、ニラの青い匂いが出口を作る。きのこが入ると、食感が増えて鍋が単調にならない。濃厚な鍋ほど、こういう“噛む要素”が効く。
途中でラー油を少し足す。表面に赤い輪が広がり、香りが一段立つ。花椒をひとふり。痺れが加わると、後味が締まり、また次の一口が新しくなる。担々は足し算の料理だが、鍋にするとその足し算が柔らかくなる。だから、最後まで食べ疲れしない。
そして、定食としての醍醐味は小鉢と白飯にある。漬物やナムルの塩気が、濃厚さの間に“空白”を作る。白飯は、鍋のスープを回収するための器だ。終盤、スープを少し残してご飯をひと口だけ入れる。胡麻味噌の旨みが米に絡み、肉味噌の粒が残っているとさらに強い。卵を落とせば、辛味が丸くなり、〆が“雑炊”の顔になる。最後の一口まで、きちんと設計されている。
締め
胡麻味噌坦々鍋定食は、担々の熱を、胡麻と味噌のコクで包み込んだ“濃厚なのに丸い”鍋だった。肉味噌が時間とともにスープを育て、豆腐と野菜が辛味の出口を作る。追い飯まで含めて、最後まで旨い。寒い日に心と体を同時に温める、頼れる一膳だった。
次回予告
次回は、鍋の濃厚さから一転して、香ばしい“焼き”と甘辛い照りへ。皮はパリッ、身はふっくら。タレが指先に残る――。次はうなぎ蒲焼き定食を取り上げようと思う。
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