楓花家+桐島、四日間だけの温泉休暇 【四日目:最終日】
朝。
山の空気は不思議なほど澄んでいた。
旅館の周囲に、人影はない。
告知通り、すでに役目を終えた場所だ。
理久は一人、静かに立っている。
ノートは閉じたまま。
もう書くことはない。
「……予定通りだね」
その言葉を合図にしたわけではない。
ただ、
“そうなるように整えられていた”
それだけだ。
次の瞬間、
旅館の奥から低い音が響く。
派手ではない。
だが、確かに空気が揺れた。
建物は一気に崩れ落ちるのではなく、
順序を守るように、
役目を終えていく。
理久は動かない。
ただ、最後まで見届ける。
やがて音は止み、
残ったのは静寂と、
形を変えた景色だけ。
「……記録に残るのは、結果だけでいい」
彼女はそう呟き、
踵を返した。
その日、
温泉旅館は地図から姿を消した。
理由も、過程も、
公には語られない。
――四日目。
四日間の休暇は、予定通り終わった。
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