初詣の人混みに紛れ、紫峰怜花は神社の境内を歩いていたそんな彼女の視線を釘付けにする光景が目に入る。
「狭霧さん…?」
そこには、普段は冷静で理知的な生徒、狭霧華蓮がいた。しかし、いつもの制服姿ではなく、白い襦袢に赤い袴を纏い、巫女姿で参拝者を案内しているではないか。華蓮は手際よく参拝者にお守りを渡しながら、微笑みを浮かべている。
「先生、あけましておめでとうございます。こんなところでお会いするなんて偶然ですね。」
「…おめでとうございます。、狭霧さんその恰好?」
「ええ、冬休みだけ親戚の手伝いでやっているんです。先生、おみくじは引かれましたか?」
「まだだけど…」
「じゃあ、ぜひ引いてみてください」
そう言うと華蓮は怜花をおみくじの前に連れて行った。その強引な誘導に押され、怜花はしぶしぶおみくじを引いた。
「……大凶?」
引き当てた紙には、大きく「大凶」と書かれていた。怜花の表情が固まり、周囲の空気が一瞬にして冷えたように感じられた。そんな彼女を見て、華蓮は一瞬動揺したが、すぐに巫女らしい笑顔を作り直した。
「大凶、ですか。あ、あの、これは、おみくじは結果ではなく、その内容からどれだけ学びを得られるかが大切なんです!」
早口でまくし立てる華蓮の声が震えているのがわかる。怜花は眉を寄せ、深くため息をついた。
「でも、大凶って一番悪いんでしょう?」
「そ、そうとも限りません!」華蓮はさらに早口になり、「大凶はこれ以上悪くならないという意味でもあります。それに、運勢よりもおみくじの内容が重要なんです。
ここに書かれているアドバイスを実践すれば、必ず良い方向に向かいます!」
怜花は苦笑しつつ、紙に書かれた「大凶」の文字を眺めた。そこには「足元に注意せよ」「焦らず、今は休む時期」といった助言が並んでいる。
「まあ、そう考えれば悪くないかもね……」
そう言いながらも、怜花の声にはまだ落胆の色が残っている。それを感じ取った華蓮は、少しの間考え込み、やがて再び口を開いた。
「先生、大凶を引ける確率は非常に低いんです。宝くじに当たるようなものだと思えば、逆にすごく幸運じゃないですか?」
「……無理やりねじ込んできたわね、その理論。」
思わず吹き出した怜花に、華蓮も少し照れたように笑った。
「でも、笑顔になっていただけたなら、良かったです。」
雪がちらつく中、怜花は大凶のおみくじをしっかりと結びつける。二人の間には、初詣の冷たい空気の中に、ほんのりとした温かさが漂っていた。