「……よし。これで完璧です。今日の私は、いつにも増して『できる猫』のオーラが漂っていますよ」

鏡の前でピースサインを決め、満足げに尻尾を揺らしているのは新人メイドのタマ。そこへ、教育係の先輩メイドが通りかかりました。

「タマ、準備はいい? ……って、ちょっと待ちなさい。そのエプロンのポケットに入っている物体は何?」

「これですか? これは、今日の秘密兵器『アヒル隊長』です。お風呂場からスカウトしてきました!」

「お風呂場から? なんでそんなものを仕事中に持ち歩いているのよ」

タマは自信満々に胸を張り、猫耳をピンと立てて答えました。

「先輩、知らないんですか? お料理の隠し味には『遊び心』が必要だと、昨日のテレビで言っていたんです。煮込み料理の温度が上がりすぎたら、隊長がプカプカ浮いて知らせてくれる……はずです!」

「……それ、ただのプラスチックの玩具でしょ。溶けたらどうするのよ」

「はっ!? し、失念していました……! 隊長がドロドロの黄色いソースになってしまうところでした。危うく、新作の『アヒル風ポタージュ』を爆誕させるところでしたよ!」

タマは慌ててアヒルをポケットの奥に隠し、顔を真っ赤にしてモジモジし始めました。

「もう……。いいから、隊長は後でお風呂に戻しておきなさい。ほら、お客さまにお茶をお出ししてきて」

「わかりました! 隊長なしでも、私の猫の手パワーで最高のティータイムを演出してみせます! ニャーっ!」

気合十分に飛び出していったタマでしたが、その直後、廊下で「あ、足がもつれましたニャー!」という派手な音が響き、先輩メイドは深くため息をつくのでした。

呪文

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