わたしは霊が見える。
それはもう、昔からのことだった。
でもそれは、特に特別なこととは思っていない。

「またそこに立ってる。あの子、好きだねぇ、階段の踊り場」

今日もまた、旧校舎の階段の途中に、小さな男の子の霊が立っていた。
制服じゃなくて、昭和っぽい半ズボン姿。声は出さないけど、いつも目で追ってくる。

「おにごっこ……なの?」

そう訊いてみたら、男の子の霊はこくんと頷いた。
ランドセルを背負ったまま、じゃんけんの構えをしている。

「じゃあ、最初はグー」

でも霊はおにごっこができない。ふわっとすり抜けてタッチができないから。

「ごめん、ルール違反だね。じゃあね、また明日」

放課後になると、毎日階段でその子に会って、
すこしだけ話しかけて、それから帰っていく。

「……なにしているの?」

親友が来た。
霊の姿が見えない彼女には、わたしが一人で空中に話しかけてるように見える。

「おにごっこしてたの」

「ひとりで?」

「ううん、二人で。でも相手はタッチできないから、こっちの勝ち〜」

彼女はぽかんとしていたけど、すぐに笑った。

「もう、変なこと言ってると、また幽霊見える子って言われるよ〜」

「言われてるけど、別に困ってないよ」

そう言って、わたしはまた踊り場を振り返る。
男の子の霊が、ほんの少しだけ、笑ったように見えた。

そして消えていった…

そんな、なんでもない日々の積み重ね。
特別じゃないけど、どこか静かに心に残るような。

冥土のメイドになる前の、
まだただの学生でしかなかった頃の、ちいさな放課後の話。

呪文

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