僕を守るように前を歩く彼女はシンカロンという人間によく似た外見を持った汎用人型アンドロイドだ。
僕たちは今2人でニューカナヤマへ向かっている。
以前、彼女の機械部分が劣化して僅かに動作が鈍くなっている事に気付いた。僕は直してあげたかったけどそんな技術は持っていないしお金も無かった。
そんな時、悪名高い富裕層のシンカロン研究所の敷地内に最新型のパーツの試作品が庭にずっと放置されていた事を思い出した。「使っていないのなら…」と、つい敷地内に侵入してしまったのだ。
しかし、相手の対応は早くあっという間にバトラー型のシンカロンに取り囲まれてしまった。
殺されると思った瞬間、彼女が身を挺して僕を守ってくれたのだ。
彼女は汎用型のためバトラー型には敵う筈もなく、僕を抱えて敷地内からすぐに脱出するのがやっとだった。
どれくらいの時間が経っただろう…どうやら気絶していた様で気付いたら僕は深い森の川のほとりで彼女に抱かれて寝ていた。
激しい逃亡だったのだろう。彼女の綺麗な髪や衣服は傷や泥だらけになってしまっていた。それに、それに、、
彼女の左腕が!
僕は泣いて何度も彼女に謝った。なんてバカで無謀な事をしてしまったんだと。
でも彼女は慈しむような微笑みで「私はあなたが無事であった事が何よりの喜びです。こんな私の為にマスターが行動して下さった事、心から嬉しく思います。」そう彼女は言って僕の事を抱きしめてくれた。その時、彼女の温かい腕の温もりを感じながら僕のせいで左腕の肘から先がなくなってしまったのだと実感させられまた泣いてしまった。
しかしこの時僕は決めた。ニューナカヤマには無尽蔵にエネルギーを確保できるという噂があるのは知っていた。そこに行けばきっと彼女の腕を治してくれる技術者もいるはずだ。
彼女はこの意見に勿論反対した。僕の命が最優先のため道中危険だから行かせられない。私の身の事などどうでもいいと…
それでも、それでも僕は行きたかったんだ
理由は彼女に守ってもらう事が情けないので旅をして心から成長して強くなりたい。そして今度は彼女を守りたい。あと、情けない理由なんだけど、本当は…本当の本当は、治った彼女の左腕でもう一度抱きしめて貰いたいだけなんだ。
僕はまだ守られるだけの弱い人間だけど、いつか必ず彼女の前に立って守れる様な人間になる!