星がきらめく真夜中。
静かな村。
そんなところにちょっとした噂が広がっています。
「村の外で恐ろしい魔物が暴れているらしい」と。
村人たちは恐れを抱き、夜になると家から一歩も出ようとしませんでした。
しかし、一人の少女だけがこの異変に興味を持ちました。その少女の名はジジ。
若くして魔法を学び、この近辺では有名な魔法使いでした。
ジジは村の長老から話を聞き、村の外で何が起こっているのかを確かめるために調査を始めました。
夜の闇に包まれた森の中を進んで行くと、大きな足跡と倒れた木々を発見しました。
その先にいたのは――巨大なゴーレムでした。
ジジは慎重にゴーレムを観察します。
その動きに不自然な点があることに気が付きます。
村に戻り、古い書物を調べているうちに、この村で作られたゴーレムが
誤作動をして使い物にならなくなったから、森に遺棄されたということがわかります。
そうやって長い間放置されたゴーレムが、何らかの理由で再起動、、
深夜に誤作動で徘徊しているのではないかと結論付けます。
そしてこのまま放置すれば、ゴーレムの行動範囲が次第に広くなり、
最終的には村に侵入する危険性が極めて高いと、村の長老に告げました。
村人たちは冒険者を雇ってゴーレムを退治することを決めましたが、ジジは心を痛めました。
ゴーレムは本来、人々の役に立つために作られたものです。
それを使えなくなったから捨てて、また動き出したから始末する。
人間の身勝手で振り回されるゴーレムがあまりにも不憫でした。
そこでジジは決意します。
ゴーレムの命令を書き換えれば、もしかしたら誤作動しなくなるかもしれないと。
ジジは村人たちに見つからないようにこっそりと家を抜け出し、ゴーレムのいる場所へ向かいます。
命令の書き換えをするには、暴走するゴーレムに近づかなければなりません。
それは命の危険があるということです。
ジジの心には不安と決意が入り混じっていました。
それでもやらなければならない。
ゴーレムのためだけにやるんじゃない。
自分の魔法使いであるという矜持のためにやるのだ。
「それを独り善がりというのよね」
ジジは自嘲しながら月影が照らす森への夜道を進むのでした。