小説『奇書執筆の気紛れ』【ニャンノ世界】

【絵物語】
『奇書執筆の気紛れ』

此を書いているということは、
既に其の怪異が何たるかの
助けとなったのであろうと思う。

思えば、暗黒時代からネコニャリ時代の変貌というものは

ある種、革命的な奇跡があったからこそ、成せたわけで、

本来ならば、文字というものがなくば、〈行方不明〉と同様に
怪異によって失踪していたのかもしれない。

怪異とは何たるか、人の深淵に潜むもので、怪異は人から生まれるものと考えている。


火のない所から煙が立たぬように

火なくして存在を証明するのに、
決してなんら難しいことを
考える必要などないからだ。

私、吉乃十蔵は考える。

果たして、この世界で書かれた物語はリアルとノンリアルの中で
移ろいゆくものであり、

黎環時代に起きた
歴史的な崩壊点〈終末事変〉
を、何かの拍子にまた起こりはしないかと…

私は考えるわけなのだ。

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この物語はフィクションである。

しかして、戦争とは、
フィクションなのだろうか？

私〈吉乃十蔵〉は
黎環時代以前、そう、黎都路時代に願った平和への願いが

粒一つすら残さぬほどに

消えていったからこそ、

〈終末事変〉たるものは
表層化したのだと考えている。

そんな、私の手で書いたもの
〈アラレモナイコト〉は
自分でいうのも何だが、

奇っ怪な書物であり、
読めば、人の手を喰らわんとしたり、読まずとも、ニヤリと

本棚と隙間から異界のものであると存在を発しているのだ。

此を、どうすればよいかを
怪注時計局に贈る

こんなことは悪夢であっただけに終わらせたい…

しかし、この深淵こそが

人間の集合知、無意識下の影なのやもと思うと、私〈吉乃十蔵〉は

悪魔的な其に対する、自らの著書に胸を張り裂けながらも取り組み続けるのである。