ベッド・オブ・ローゼズ　～ノブレスオブリージュの萌芽～

投稿企画「ベッドの上での思い出」参加用作品です。
一枚目がi2iでSDXL生成した完成画像、二枚目が素地としてGRYPHONで生成したオリジナル画像。
GRYPHON→Photoshop(AI補完)→i2i(SDXL)手順です。
今回は実験としてGRYPHONを縦長で生成し、Photoshopでいつもの横長3:2比率に左右を延長
してから、SDXLでi2iしています。

ボン・ジョヴィの曲で有名な「ベッド・オブ・ローゼズ」、直訳すると「バラのベッド」ですが、
「裕福な暮らし」という意味があります。

【ベッド・オブ・ローゼズ】
夜の帳が静かに降りた頃、クレアは窓辺のベッドに腰かけ、お気入りの人形を無意識のうちに抱きしめていた。
淡いシルクのナイトドレスに身を包み、薔薇で飾られたアーチ窓から見える星空を、ぼんやりと見上げる。

部屋は柔らかなランプのあかりと、宙を舞う魔法の煌めきに包まれていた。どこを見ても優しさに満ちた空間
……でも、彼女の瞳の奥には、まだ幼いとは思えぬ深い陰りが宿っていた。

「どうして私は、労せずこんなに沢山のものを持っているの……？」

クレアは問いかけるように、ぬいぐるみの女の子に話しかける。答えは返ってこない。ただ無機質な
笑顔がじっと彼女を見つめ返しているだけ。

お屋敷の使用人たちは皆優しく、何不自由のない暮らしだった。けれど父がよく言う言葉が、彼女の
胸に重くのしかかる。

――「人の上に立つ者は、見えぬ涙を知れ」

バラの香りと淡い光に包まれて眠るベッドは、誰かの疲れた手が、誰かの失われた時間が、積み重なって
できたものなのかもしれない。

「わたし、いつか……それを返せる人になれるかな」

夜空の向こう、眼下に広がる街灯りに多くの人々の暮らしを思い浮かべながら、
クレアは静かに瞼を閉じる。
彼女の小さな胸に芽生えた“疑問”と“責任感”は、やがてこの国を変えていく最初の種と
なるのだろうか。

それはただの“幻想”ではない。
薔薇のベッドに眠る少女は、いつの日か立ち上がる――強さと優しさの名のもとに。

完