木々の隙間から神々しい光が差し込む、古の森。そこに、伝説の巫女――のような格好をした少女、コハクが佇んでいました。

「……来たわね。迷える旅人よ」

コハクは組んだ手にギュッと力を込め、慈愛に満ちた(つもりの)微笑みを浮かべます。

「わ、わあ……。本当にいたんだ、森の守り神様……!」

「神様だなんて、滅相もない。私はただの、この森に伝わる『黄金の意思』を継ぐ者。さあ、あなたの悩みを聞かせてちょうだい。古の知恵をもって、解決へと導いてあげましょう」

「すごい! 実は、さっきから道に迷ってしまって……」

「……道?」

コハクの眉が、ピクンと動きました。

「そうなんです。お腹も空いたし、どうすればいいか……」

「お腹。……お腹が空いた、と言ったのね?」

コハクは一歩、身を乗り出しました。その青い瞳が、先ほどまでの神秘的な輝きとは違う、獲物を狙うハンターのような光を放ちます。

「旅人さん。……さっき、そこの藪を通った時、『肉まん』の袋を持ってなかった? 私の鼻……じゃなくて、守り神としての感応能力が、たった今それを検知したわ」

「えっ、あ、はい。コンビニで買ったやつが一個、カバンに……」

「それを捧げなさい。さすれば、出口までの最短ルートを教えましょう。なんなら、私の肩に隠し持っている特製お守り(森のどんぐり入り)も付けるわ!」

「ええっ!? 意外と現金……っていうか、食いしん坊なんですね……」

コハクはハッとして、再び組んだ手に力を込め、お淑やかに微笑み直しました。

「失礼な。これは『等価交換』という名の、森の神聖な儀式よ。さあ、冷めないうちに……じゃなくて、徳を積むために、早く出しなさい。皮がしなしなになった肉まんなんて、伝承の名が廃るわ!」

「神聖な儀式が台無しだよ!」

結局、コハクは肉まんと引き換えに、ものすごいスピードで森の出口まで案内してくれました。その足取りは、どの伝承に語られる巫女よりも軽やかだったそうです。

呪文

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