夜空に浮かぶ満月は、ある日ひとしずくの黄金となって雲海へ落ちた。

その雫は、月の神が人々の「おいしい」という幸せを忘れないようにと残した、小さな贈り物だった。

白い雲は湯気をまとい、ごつごつとした山々はやわらかな鶏へ姿を変え、金色の光は静かに世界を包み込む。

旅人は遠くから、この景色を月夜の幻想郷だと思って歩き続ける。

けれど、近づくにつれて香ばしい出汁の香りが風に乗り、山だと思っていたものは鶏肉に、霧だと思っていたものは白いご飯に、湖だと思っていた黄金の水面は、とろりと輝く卵だったことに気づく。

そう、この世界そのものが、一杯の親子丼だったのだ。

月が満ちる夜にだけ現れるこの器は、「誰かを想って作る食事は、どんな宝よりも温かい」という願いを映し出すという。

もし器のどこかで、小さな海月を見つけられたなら――。

それは月の神が「また帰っておいで」と、そっと微笑んだ証なのかもしれない。

呪文

入力なし

海月ゆうさんの他の作品

海月ゆうさんの他の作品


関連AIイラスト

新着AIイラスト

すべてを見る