ケーキ……水………

「ああ……ちくしょう。隊列とはぐれちまって今どこ歩いてんのかわかんねえ。もう最後に食ったものも思い出せねえし、俺ももう長くねえか……。ん。人影が見える。おーい！すまねえー！聞こえるかー！」
振り返ったのはこの砂漠にまるで似つかわしくない人物だった。見たところ隊列も組まずこの砂漠をひとり行く、炎天下なのにロングドレスを纏った少女……いや。
「えっケーキ……。ああ……ダメだ……幻を見ちまうなんて。」

「ちょっと〜。なんかこの前もそんなこと言って死にかけてるお兄さんに会ったけど、なんでみんな性懲りも無く死にかけて、面白げもなく私のこと幻だなんて言うのかな〜。ここってそんなに物騒な世の中だっけ。私は幸せな人たちと一緒に幸せにケーキを食べていられればそれで良いのに〜。」
「お、おう……。すまねえ。それで、ここはどこかわかるか？はぐれちまってな。」
「ここは見ての通り砂漠。一番近い街まではこのまま西へあと20kmくらいだと思うよ。」
「そうか！ありがとう、なんとかなる気がしてきたよ。それじゃあ、達者…」
「さあ、Desertで楽しむDessertにケーキはいかが？」
「ハハッ、そんな洒落をマジのデザートで言うやつ初めて見たぜ。ちょっと軽口を言えるくらい元気になったよ。喋るケーキがこの世にいるなんて、まだまだ俺はこの世界を知らなかったんだ。」
「さあ！……という前に、きっと今あなたに必要なものはこれかな？」
「えっ……そうだ、水も尽きたんだ。……貰っちまっていいのか？この砂漠では水は命だぞ。」
「大丈夫、だって私ケーキだもん！この暑さじゃお茶を淹れるのはちょっとね。もらってよ。私は本当に大丈夫、私の命はいつでも焼きたてケーキだからね。きっと次の街にも楽しいケーキがたくさんだよ！」
「ありがとな。街に着いたらお礼をさせてもらうよ。」
「どういたしまして！……もうすぐ日が落ちる。水もケーキもあるから、夜に備えよう。」
「……なあ気になってるんだが、まさかケーキってお前自身のことじゃないよな。」
「えっ？私がケーキでケーキは私だよ？一口いかが？」

サク！とどこからともなくスプーンを取り出して自分の腰に立て、そのまま嬉しそうに頬張って見せる。
「うわっ……！びっくりした！お前ケーキだったのかよ！？」
「どこからどう見てもケーキじゃん。さあ、景気付けにケーキをどうぞ！水もまだいっぱいあるよ。」
「フッ、ハハハ！こりゃ敵わん。じゃあ、お言葉に甘えるとしようか。」

＊＊＊

「うーん、美味かった。最高だ。」
「今日の私もやっぱり最高。ありがとうパティシエさんたち！」
「（……こいつの正体がなんなのか、どうして食ってもケーキが欠けないのか。でも。）なあ、本当に感謝に堪えない。お前は……君は俺の恩人……いや、恩ケーキだ。この後は街に行くので良いか？流石に何かお返しはしないと。」
「あははは、恩人、恩ケーキ、……温ケーキ………ん、そうだ、ケーキはケーキでも惣菜ケーキ、ケーク・サレっていう料理もあるね。実は見たことないや。じゃあ旅は道連れ、一緒に探しに行ってもらっても良い？」
「承知だ。夜は冷えるから気をつけてくれ。」
「大丈夫、この世にケーキある限り、私はずっと新鮮だよ。」
「ンッフフ、この世に正義ある限りじゃないのか。」
「……。この世にケーキある限り、絶えぬ祝いの宴あれ。ストロベリーショート、ここに参上。」
「君ほんとノリ良いな！」

---
ただの親父ギャグ回。
普段はお茶を淹れるために大量の水を……持ち歩くでもなく、どこからともなく取り出すケーキ（？）ちゃん。
最後に本職である（？）祝いの席に呼ばれたのが首都の茶会で、それ以来人助けしかしていないことに気づいた模様。

最初→ https://www.chichi-pui.com/posts/68a5f84d-3e9b-46e8-9344-700fce08a962/
前々→ https://www.chichi-pui.com/posts/d30eca0b-e8e8-4854-83dc-1487b61b13a4/
前→ https://www.chichi-pui.com/posts/fc122703-d958-4070-8c51-d6a16892fdb0/

---
Regional PrompterのPrompt指定によりdressをcakeに置き換える試行。プロンプト一発出し。
モデル: Animagine XL 3.1