本日のランチ
カキフライ定食
――短い火入れに、海の旨味を閉じ込める
牡蠣は、強い食材だ。
濃厚で、香りがあり、ひと口で印象を持っていく。
だからこそ、揚げ物にしたときは“衣の派手さ”より“火入れの短さ”が問われる。
皿の中央に、こんがりとしたカキフライが並ぶ。
衣は厚くない。表面の粒が立ち、触れただけで軽さが伝わってくる。
まずは何も付けずに一つ。
サクッとほどけた直後、中心から牡蠣の汁がじわりと出てくる。
この瞬間に、今日の勝負は決まる。
加熱しすぎた牡蠣は、縮んで固くなる。
だが、このフライは瑞々しさを残したまま、中心まできちんと熱が通っている。
短い時間で、必要なところだけに火を入れた味だ。
次にレモンを軽く搾る。
牡蠣の甘みが引き立ち、油の輪郭がすっと引く。
そしてタルタルを少量。
コクは足されるが、牡蠣の香りを奪わない。
“使う量を選べる”ことが、この定食を最後まで軽くしている。
千切りキャベツは、単なる付け合わせではない。
牡蠣の濃厚さと揚げ油の余韻を受け止め、次の一口のために口を整える。
味噌汁と小鉢、香の物が間に入ることで、揚げ物の定食は破綻しない。
脇役が強すぎず、しかし不足もしない。こういう配置は意外と難しい。
牡蠣のフライは、贅沢に見えて、実は誠実さの料理だ。
厚衣でごまかさず、揚げ時間をごまかさない。
その正直さが、一つ一つのフライに残っている。
■ 締めの一文(編集後記的まとめ)
牡蠣は濃い。だからこそ、軽く揚げる意味がある。
カキフライ定食は、揚げ物の“引き算”を確かめる一膳だ。
■ 次回予告(1/26掲載予定)
次回の食彩探訪は、
「けんちん汁定食 ― 根菜の湯気に冬を見る」。
派手さはない。だが、湯気の向こうに安心がある。
出汁、胡麻油、根菜の甘み――静かな旨味を追いかけたい。
次回もまた、日常の真ん中を食べに行く。
呪文
入力なし