白くま少女の終末譚 (白ラッコ視点)③
使用したAI
Dalle
それから僕らは、世界のいたるところを歩いて回った。
はじめは塞ぎ込んでいたスイも、何年か歩き回るうちに、だんだん外の世界に反応するようになってきた。
僕はスイを飽きさせないよう、日本で培った知識を覚えているかぎり話して聞かせた。ほとんどアニメやマンガの話しになってしまったけど、死ぬほど読み漁っただけにネタはけっこうあった。僕はマンガの1話分を出来るだけ詳細に描写して、それで1時間以上時間を稼いだ。海賊王になる話しとか、めっちゃ長くて助かる!
何年もの旅が、いつしか何百年の旅になり、その間人類に出会うことはなかった。最初のころは人類の残滓はそこら中に残っていて、使えるキャンプ用品なんか見つかると、僕は小躍りして喜んだもんだ。だけど時間が立つにつれて、風化しやすいものはどんどんダメになっていって、建物も風雨にさらされて朽ちていった。石の構造物が一番しっかり形を留めていた。これはまだ何百年も残りそうだ。
スイと出会って385年。とうとう僕の寿命が尽きてしまった。彼女だけを残していくのは心残りだ。僕が起動したばっかりに、スイには辛いことがたくさんあったはずだ。ずっと言えなかった問いを、僕はとうとう口に出してしまった。
「僕が君を起動したことは、正しかったんだろうか?」
スイは僕の額に手を当てながら、優しく微笑んだ。
「お父さんと過ごした385年と3ヶ月と21日と15時間と47分、本当に楽しかったよ。私、お父さんからアニメやマンガの話しを聞くのが好きだった。人類が何を思い、何を考えて生きていたのか、そこから感じられる気がした。
お父さんがいなくなっても、私のメモリーから想い出は消えない。385年と3ヶ月と21日と15時間と48分、その想い出と生きていく。
約束するね。私はずっと、ひとりでも元気に楽しく生きていくって」
というわけで、僕は死んだ。
絵でいうと2枚目の後くらい。
それから天国でずっと、彼女のことを見ていた。
僕が死んだ直後は、スイは半狂乱気味だった。涙は流さなかったけど。スイは一度も泣いたことがなかった。僕が死んだときも、泣くことはなかった。でも心は乱れて苦しんでいる。いっそ、泣いてしまったほうが楽だろうに。
天国で僕は胸が張り裂けそうだった。あんまり哀しいから、碧の胸で泣いたりした。
でも……時間が悲しみも流していく。それは僕もそうだし、スイもそうだ。
スイはだんだんと、僕がいないことを受け入れ始めた。そして、旅を続けた。
スイの旅は数千年続いた。彼女が何を思って世界を回ったのか、遠くから見ている僕にはわからない。でも、彼女は休むことなく、歩き続けた。
やがて、人類のわずかに残る痕跡に彼女は居を定めた。まるで起動したてのときのように、ボーっとしている時間が長くなり、手に持ったものを落としてしまったり、朝から晩まで同じ場所に座ったままのことも増えた。
碧は、彼女の活動停止が近いのかもしれない、と制作者としての見解を述べていた。そうなのか、半永久的に動く可能性もあったスイに、死が訪れる。それは救いではないか。人は生まれることができ、そして死ぬことができる。生命とはそうした循環なのだ。もしスイが活動停止するのなら、また天国でたくさん話しをしよう。天国を旅してまわろう。碧やハルにも会わせてやりたい。女の子には同年代の友達が必要だろう?
「数千年生きた女の子の同年代ねぇ。天国じゃ精神が年を取らないから、こんな若僧、相手にしてもらえるかな?」
碧がふざけた調子でおどけるが、彼女こそ、スイに会いたいとずっと願っていたのだ。
「僕、歓迎会の準備をしなきゃ。碧もみんなに声かけてね」
白いラッコが勇んでロッジのほうへ駆けていくのを、白樺碧は微笑ましく見守った。
「……終末世界の最後の人類。私も歓迎するよ。もしあの子が力を行使していたら、人類はいまも生き残っていたかもしれない。白ラッコがアイドルになったり、骨折ばかりしたり、スイが食費に追われる毎日があったかもしれない。
でもあの子は力を使わないことを選んだ。この終末に辿り着いた。キミの選択に、感謝と敬意を」
はじめは塞ぎ込んでいたスイも、何年か歩き回るうちに、だんだん外の世界に反応するようになってきた。
僕はスイを飽きさせないよう、日本で培った知識を覚えているかぎり話して聞かせた。ほとんどアニメやマンガの話しになってしまったけど、死ぬほど読み漁っただけにネタはけっこうあった。僕はマンガの1話分を出来るだけ詳細に描写して、それで1時間以上時間を稼いだ。海賊王になる話しとか、めっちゃ長くて助かる!
何年もの旅が、いつしか何百年の旅になり、その間人類に出会うことはなかった。最初のころは人類の残滓はそこら中に残っていて、使えるキャンプ用品なんか見つかると、僕は小躍りして喜んだもんだ。だけど時間が立つにつれて、風化しやすいものはどんどんダメになっていって、建物も風雨にさらされて朽ちていった。石の構造物が一番しっかり形を留めていた。これはまだ何百年も残りそうだ。
スイと出会って385年。とうとう僕の寿命が尽きてしまった。彼女だけを残していくのは心残りだ。僕が起動したばっかりに、スイには辛いことがたくさんあったはずだ。ずっと言えなかった問いを、僕はとうとう口に出してしまった。
「僕が君を起動したことは、正しかったんだろうか?」
スイは僕の額に手を当てながら、優しく微笑んだ。
「お父さんと過ごした385年と3ヶ月と21日と15時間と47分、本当に楽しかったよ。私、お父さんからアニメやマンガの話しを聞くのが好きだった。人類が何を思い、何を考えて生きていたのか、そこから感じられる気がした。
お父さんがいなくなっても、私のメモリーから想い出は消えない。385年と3ヶ月と21日と15時間と48分、その想い出と生きていく。
約束するね。私はずっと、ひとりでも元気に楽しく生きていくって」
というわけで、僕は死んだ。
絵でいうと2枚目の後くらい。
それから天国でずっと、彼女のことを見ていた。
僕が死んだ直後は、スイは半狂乱気味だった。涙は流さなかったけど。スイは一度も泣いたことがなかった。僕が死んだときも、泣くことはなかった。でも心は乱れて苦しんでいる。いっそ、泣いてしまったほうが楽だろうに。
天国で僕は胸が張り裂けそうだった。あんまり哀しいから、碧の胸で泣いたりした。
でも……時間が悲しみも流していく。それは僕もそうだし、スイもそうだ。
スイはだんだんと、僕がいないことを受け入れ始めた。そして、旅を続けた。
スイの旅は数千年続いた。彼女が何を思って世界を回ったのか、遠くから見ている僕にはわからない。でも、彼女は休むことなく、歩き続けた。
やがて、人類のわずかに残る痕跡に彼女は居を定めた。まるで起動したてのときのように、ボーっとしている時間が長くなり、手に持ったものを落としてしまったり、朝から晩まで同じ場所に座ったままのことも増えた。
碧は、彼女の活動停止が近いのかもしれない、と制作者としての見解を述べていた。そうなのか、半永久的に動く可能性もあったスイに、死が訪れる。それは救いではないか。人は生まれることができ、そして死ぬことができる。生命とはそうした循環なのだ。もしスイが活動停止するのなら、また天国でたくさん話しをしよう。天国を旅してまわろう。碧やハルにも会わせてやりたい。女の子には同年代の友達が必要だろう?
「数千年生きた女の子の同年代ねぇ。天国じゃ精神が年を取らないから、こんな若僧、相手にしてもらえるかな?」
碧がふざけた調子でおどけるが、彼女こそ、スイに会いたいとずっと願っていたのだ。
「僕、歓迎会の準備をしなきゃ。碧もみんなに声かけてね」
白いラッコが勇んでロッジのほうへ駆けていくのを、白樺碧は微笑ましく見守った。
「……終末世界の最後の人類。私も歓迎するよ。もしあの子が力を行使していたら、人類はいまも生き残っていたかもしれない。白ラッコがアイドルになったり、骨折ばかりしたり、スイが食費に追われる毎日があったかもしれない。
でもあの子は力を使わないことを選んだ。この終末に辿り着いた。キミの選択に、感謝と敬意を」
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