【ツンデレのジト目】

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【ツンデレのジト目】(つんでれ-の-じと-め)

「ツンデレ」とは一般に、好意や嬉しさを素直に出せない恥ずかしさが、相手への反発や否定的な言葉として表に出る振る舞いを指す。たとえば「べ、別にあんたのためじゃないんだからね!」のように、「（本音）＋（打ち消し）」という構文が典型的。ただし、ツンデレ表現は必ずしもジト目とだけ組み合わされるわけではなく、多様な組み合わせがあり、文脈や関係性によって温度差や強度は異なる。

目は半分ほど開き、相手をまっすぐに見据える。頬はほんのり赤く、口はへの字。「軽蔑のジト目」ほど冷たくはないが、そこには隠しきれない温度が宿っている。ツンデレ特有の「恥ずかしいけれど嬉しい」という相反する感情が一瞬にして顔に現れたそのとき――ここでは便宜的に「ツンデレのジト目」と呼ぶ。

好きな人に褒められた瞬間、思わずデレっとしてしまいそうになる。でも、それを見られるのは恥ずかしい。だから思わず「うるさい!」「勘違いしないでよ!」などと声を荒げてしまう。神様――すなわち読者や視聴者――の視点から見ると、感情の反射的反応→打ち消しの試み→言葉による防御という流れがひとつのフレーム内で展開していることがわかる。

現実では、似たような「優しい嘘」や、別項で扱う予定の「からかいのジト目」が、すれ違いや誤解を生むこともある。人と人の心の動きから見ると、こうした反応はしばしば防衛的な自己表現として現れる。恥ずかしさを避けるために感情をねじって伝えてしまう――その行為自体は人間関係の中で自然なものだが、互いの意図が共有されないと、好意が反発に、反発が好意に読み替えられてしまう危うさをはらんでいる。そう勘違いして失敗したことなんかまったく、いっさい、ぜんぜんないんだからね!

けれど、フィクションの中ではその不器用さが魅力に変わる。「ツンデレのジト目」は、現実ではすれ違いに終わってしまう感情を、物語の中で可視化するためのひとつの記号といえる。照れと反発、好意と防衛のあいだに生まれるその表情は、言葉にならない優しさが形を得る瞬間なのだ。