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【マタタビ】15.黄昏梟との遭遇
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「奇遇だね、シロちゃん。こんなところで何してるの?」
その男は、ニューオオスのカフェ“ポームム”で知り合ったグリルスという男だった。グリルスを見て、グリレも動きを止めた。
「グリルス、この旅人たちは君の知り合いかい?」
「そうだよ! ニューオオスの街で出会ったんだ」
グリレの質問に、グリルスは答えた。2人はお互いに知り合いのようだ。ということは、グリルスも黄昏梟の構成員なのか。グリレ一人でも手に負えないと言うのに、もう一人増えてしまっては、こちらに勝ち目はない。グリルスが、シロに向かってゆっくりと近づいてくる。俺は、グリルスに向かって威嚇した。しかし、グリルスはにっこりと笑い、シロに向かって手を差し伸べた。
「大丈夫かい、シロちゃん。立てる?」
シロは、差し伸べられた手をそっと掴む。
「ありがとう……グリルス」
グリルスは、シロの体を引き寄せ、立ち上がらせた。そして、グリレを振り返って言った。
「なぁ、グリレ。女の子相手にちょっとやり過ぎじゃないか?」
「……ただの一般人なら、僕も手を上げないよ。だけど、この子たちは星の樹に関する情報を持っている」
グリレは、言い返す。
「あちゃー、星の樹のことをグリレに話しちゃったんだ?」
グリルスは、額に手を当てて天を仰ぐ。
「グリルス。君は、この子たちが星の樹について知っていることを知っていたのか?」
「まぁね。ほら、ニューオオスのカフェ“ポームム”で、星の樹の噂話を聞きつけて情報を買いに来た旅人がいたって言っただろ? あれがシロちゃんたちだったんだ。俺は、シロちゃんたちが、メイドたちから星の樹に関する情報を得ていたのを、この耳で聞いたんだ」
そう言って、グリルスは自分の耳を指さす。そこには、小さな機械部品が埋め込まれているのが見えた。あれも“奇跡の残響”だろうか。グリルスが黄昏梟の構成員だったとすると、ポームムに訪れたのも情報収集のためで、俺たちの会話は、盗聴されていたということか。正直、ただの変な客だとしか思っていなかった。
「この子たちが、ルースト005のマップを持っていることは、知っていたのか?」
グリレが問いただすと、グリルスは驚いた。
「そんな物を持ってるの? そう言えば、メイドたちから何かプレゼントを貰っていたみたいだったけど……中身までは分からなかったな」
グリルスは、腕を組んで悩む。
「確かに、ルースト005のマップは、俺たち黄昏梟が喉から手が出るほど欲しいアイテムだね……」
しばらく悩んだ後、グリルスは、その場にいる全員に提案を持ち掛けた。
「じゃあさ、俺たち協力しない?」
グリルスは、その場にいる一人一人を見ながら、話を続ける。
「シロちゃんとクロも、俺たち黄昏梟も、星の樹についての情報を欲しがっていて、ルースト005の最深部を目指しているでしょ。目的が同じなら、争わなくてもいいんじゃない?」
「……協力したとして、俺たちに何のメリットがある?」
俺は、グリルスに尋ねる。
「そうだねー。星の樹に関して、俺たち黄昏梟が知っている情報を提供するよ」
「待て、グリルス。それは機密事項だ」
話の成り行きを見守っていたグリレが口を挟む。しかし、グリルスは反論した。
「ルースト005のマップの方が重要だろ? 俺たちが今持っている情報なんて、ルースト005の最深部に眠っている情報に比べれば何の価値もない」
グリレは、しばらく黙っていたが、最終的には頷いた。
「分かった。情報提供を許可しよう」
「さっすがグリレ! 話が分かるなー!」
グリルスは、グリレの背中をバンバンと叩く。そして、黄昏梟側の話がまとまったところで、グリルスはこちら側の意見を聞いてきた。
「シロちゃんとクロも、それでいいかい?」
「ああ」
俺は頷く。グリルスの仲介がなければ、どうせマップは奪われていたものだ。マップは手元に残り、黄昏梟との争いが避けられ、その上、黄昏梟が握っている星の樹の情報を得られるのであれば、協力しない手はない。
こうして、俺とシロ、黄昏梟のペアは、一時的に同盟を結ぶこととなった。俺たちは、お互いに武器を収め、3人と1匹でルースト005の最深部を目指した。
(次の話)
【マタタビ】17.神の繭
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