D・トラベラー

「生きてる？」

「どうだろ？ちょっと待ってね…」

声が聞こえる
誰かが私の傍で会話をしているようだが…
誰だろう…？
いや、それよりも
私は今、どうなっている？
何が起きた？
意識も朦朧としている…
全身が怠い…力が入らない
身体が動かない
倒れているのだろうか？
ただ…感覚そのものはある様で
何者かが首筋に触れているのはわかる
会話をしている『誰か』だろうか？

「うん、大丈夫みたい。」

「そ。じゃあ問題ないね。」

首筋に触れていた…手だろうか？…が離れ
傍らに居た気配が立ち上がったのが分かった。
何が起こったのか…会話していたのが誰なのか
混乱している頭で…
それでも何か…少しでも情報が欲しくて
重い瞼を無理矢理開くと
二人の少女が立っているのが見えた
無機質な…
無感情な瞳をした
そっくりな二人…
双子…？
…学生…だろうか…？
この辺りでは見かけない珍しいセーラー服の少女達だ
彼女たちは暫くの間スマホの様な物を弄っていたが
やがて周囲を一瞥すると
私の見て目を見開いた。

「…あれ？あれあれ？起きた…？」

「うそ？…ホントだ…どうしよう？」

…なぜか私が目を開けた事に驚いている様だ
というか『どうしよう』というのは…
どういう意味だろうか…？

「…まぁ、見られたところで問題ないでしょ…
　誰かに話したって信じやしないだろうし…。
　夢でも見たんじゃない、で終わりだと思うよ」

「…それもそうか…」

「それに記憶弄るとどんな影響が出るか
　わかんないからね…極力避けたいし。」

「…あ～…ね。そっちの方がヤバイね。」

…なにか恐ろし気な会話が聞こえてきている様な
そんな気がするのだが…頭が回っていない所為か
うまく理解できない…

「じゃあ…私達はこれで失礼するね。」

「元気でね～。」

少女達がそう言った瞬間
彼女達の周囲がグニャリと歪み
『マーブル模様の何か』になり
二人はその中に飲み込まれるように
搔き消えていった…