「藍苺料理祭」に参加しようと思っていたら、切り貼り合成をやっているうちに終わってました。桜吹雪があったので、「待ち遠しいあの季節」に参加します。以下本文。

「ここのブルーベリーチーズケーキはなかなかの評判なんですよ。どうぞ、召し上がってください」
「わあー、おいしそー」
「ふーむ、これは見事ですね。素晴らしい腕前です」
「なるほど、こいつはブランデーが合うな」
「だろ? ベリー系はだいたいブランデーと相性がいいんだよ」
「皆さん、エプソム地方の一件では、大変お世話になりました。おそらく、皆さんのご協力無くしては、あれほど迅速な解決はできなかったでしょう。まず、シャーロットさんの推理によって、奴らの本拠地をいち早く特定できました。そして、苦楽さん、ジェーンさん、ウルフさんの奮戦により、ミ=ゴやティンダロスの猟犬を排除して、儀式を中断させ、ラン=テゴスの復活を不完全なものに終わらせることができました」
「……あの状態でも、奴は恐るべき強敵だった。完全な復活であれば、正直、必ず勝てた自信はない。俺からも礼を言う」
「私も、前回の件で考えを改めました。こちらが関わりたくないと思っていても、奴らを放置していれば、イギリスどころか、全世界にまで害が及ぶ。ならば、防ぐ側に関わった方がいい、と。ユーミルさん、ジョージさん、私とウルフ君でお力になれそうなら、いつでもおっしゃって下さい。ただし、私は職業探偵ですので、頭脳労働に対しては相応の対価が発生します。当事務所の規定に基づき、報酬をお支払いいただくことになりますが、そこはご了承ください」
「とはいえ、お嬢様は報酬をいただかないことも割とあるのですよ。前回の事件も、自分が解決したわけではないから、と言って警部からの報酬は断っていますしね」
「もう、余計なこと言わないの、ウルフ君」
「ふふっ、ええ、もちろん、正式な依頼として申し込みいたします。シャーロットさん、シュルズベリィ博士をご存じですよね」
「はい、赤死館事件では、博士の学識に助けていただきました」
「博士も実は、『白銀の探索者』の一員なんです。私の魔術の師匠でもあるのですが、シャーロットさんの頭脳と精神は素晴らしい、と絶賛していまして、本当に言っていた通りの方ですね、あなたは」
「それはどうも過分なお褒めをいただき、ありがとうございます。シュルズベリィ博士はお身内なのですか?」
「ええ、大叔父ですが……、どうしてお解りに?」
「いや、大したことではないのですが、ユーミルさんはいつも礼儀正しいし、ましてや魔術の師匠なのに、おっしゃっていた、ではなく、言っていた、と表現されました。それに、博士のステッキと、ユーミルさんのチョーカーには同じ文様が使われています。それで。よほど近しい仲、身内かな、と推測しただけです」
「さすがだねぇ、名探偵」
「お見事です、シャーロットさん。で、苦楽さんとジェーンさんにお聞きしたいのですが、お二人の武器は特別なものなのですか? ティンダロスの猟犬には通常の物理攻撃は通用しないはずですが」
「ああ、こいつは鬼切幸綱(おにきりゆきつな)って言ってな、その昔、日本を荒らしまわった不死身の鬼を斬るために造られた刀で、ヒヒイロカネって金属で出来てる。戦国時代なら何十万石って国一つと引き換えにできるくらいの名刀だが、廻り回って、今じゃこんな素浪人の持ち物だ。ま、刀にとっちゃ、後生大事に飾られてホコリかぶってるよりは、こうやって魔物退治に役立ってる方が本望かも知れんがな」
「なるほど、東洋の聖剣なのですね」
「アタシの銃は、二丁ともじいさんが造ったもんで、回転弾倉の部分はウチに伝わってたミスリルの短剣を材料にしてる。グリップの部分も、短剣の柄の素材を再利用したもんだ。銃弾も、ウチの秘伝で、一昼夜聖水に漬けてあるんだ。火薬にも護符を焼いた後の灰が混ぜてある。ま、こんなもんでも作らないとやってられないくらい、魔物がらみのトラブルが多かったのさ、ウチは」
「『星辰のナイフ』ほどの呪具を保管していれば、呪力にひかれて魔物も現れるでしょうからね。おじいさまは呪具職人としても一流だったようですね。消耗しやすい銃身や可動部は替えが利くように作られている。見事な出来栄えです。ああ、それと苦楽さん、少し立ち入ったことをお聞きしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ん? なんだ?」
「ジェーンさんがナイ神父を追う理由はお聞きしましたが、苦楽さんはどうしてわざわざ日本からイギリスまでやって来られたのですか? なにかナイ神父と因縁でもおありなのでしょうか」
「あー、そのことか。いや、だってな、日本でやっと連中の本拠地を探し当てて踏み込んだら、ナイフはもうイギリスに持ち去られた後だったんだが、そしたらお春(ジェーン)の奴、今まで世話になった、アタシはイギリスに行く、それじゃ! って、一人で行こうとするんだぜ。さすがにそれを、はいそうですかお元気でって見送れるほど俺も不人情じゃねぇよ。敵もどんどん人間離れしていってたし、知れば知るほどナイ神父がやばい奴だと分かってきたしな。ま、どうせ主も妻子もいない根無し草だ、見ての通り英語はなんとかなるし、ついてきたってわけさ。それでユーミルさん、こっちからも聞きたいんだが、ナイ神父ってのは、ありゃ何者なんだ。直接会ったことはねぇが、行動範囲も妖術も人間離れしてる。一人じゃなくて何人かいるのか、それとも、そもそも人間じゃねぇのか……」
「それは私も聞きたいですね。ナイ神父の名前は何度か耳にしたことがあります。カルトの指導者として捜査線上に浮かんだこともあるそうですが、スコットランド・ヤードでさえ正体を掴みかねているようです。いまだに国籍すら不明だとか」
「苦楽さんの推測はおそらく当たっています。ナイ神父の名前が初めて現れたのは、今から六百七十二年も前のことです。そして、その名を名乗る人物が現われるたび、大きな魔術的事件や戦いが起きています。役職名ではないかという意見もありますが、苦楽さんがおっしゃるように、私も人間ではない可能性が高いと思っております。何人かの仲間が捜査していますが、いまだに手がかりすら掴めておりません。この際です、シャーロットさんにも、この捜査、依頼させていただいてもよろしいでしょうか」
「ええ、分かりました。ただ、現在、いくつかの事件を抱えているため、優先順位は下がってしまいますが、お引き受けしましょう」
「ありがとうございます。しかし、非常に危険な相手ですので、くれぐれもお気をつけて。なんでしたら、途中で放棄していただいても構いません。ご自分の安全を優先なさってください。それと、苦楽さん、ジェーンさん。実は、今日の本題なのですが」
「ん?」
「何だ?」
「お二人とも、腕前、お人柄、ともに信頼のおける方々と分かりました。そこで、私たちの護衛……用心棒になっていただきたいのですが、いかがでしょうか。もちろん報酬はお支払いいたします」
「ははっ、こんな海の果てまで来て用心棒稼業とはね」
「おいおい、あんたらにそんなもん必要なのかよ」
「ええ、デュランダルの召喚と制御には、私たち二人とも、魔力と精神力を大きく消費するため、一日に一度が限界で、そう長時間は動かせないのです」
「なるほど、ここぞってところでしか使えないってわけだ」
「……そういうことだ。それに正直、デュランダルでの戦いのため、魔力は温存しておきたい。あなた方のお手並みは拝見した。俺からもお願いしたい」
「ま、俺はいいぜ。日銭稼ぎにも難儀してたところだしな。むしろありがたい話だ」
「なんだよ、クラークは大道芸で結構稼いでたろ。まあ、アタシも同じだ。それに目的が同じなら、手を組んだ方が話が早い。いいぜ、乗った」
「それでは皆さん、よろしくお願いします」

呪文

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