「どうかしら、セバス! 今日の私は、どこからどう見ても高貴な薔薇そのものじゃない?」

窓から差し込む光を背に、ルナは精一杯の「気品あふれる表情」を作って見せた。フリルたっぷりのドレスと大きな帽子は、彼女の小さな体には少しばかり重装備だ。

「さようでございますね。薔薇というよりは、綿菓子に埋もれた小鳥のようではありますが」 「ちょっと! それ褒めてないわよね? 鏡の前で三十分も特訓したんだから、もっとこう……威厳を感じてよ!」

ルナはふんぞり返ろうとして、帽子の重みで首が「カクッ」と後ろに傾いた。

「おっと。……お嬢様、やはりそのお帽子はまだ早かったのでは? 首が悲鳴を上げておりますぞ」 「い、いいえ! これくらい平気よ。レディたるもの、首の筋肉を鍛えるのも修行のうちだわ。ほら、見て。この優雅な立ち振る舞い!」

そう言ってルナが一歩踏み出した瞬間。ドレスの裾を自分の靴で思いっきり踏んづけた。

「あわわわわ!」 「おっとっと。危ないところで」

セバスが片手でルナの襟首をひょいと掴み、転倒を阻止する。

「……セバス、今のは、地面の感触を確かめていただけよ。転ぶなんて非公式な動き、私がするわけないじゃない」 「失礼いたしました。地面の硬さを確認する試験にパスしたということで、おやつにいたしましょうか。本日は特製マドレーヌです」 「マドレーヌ!? ……ふん、まあ、そこまで言うなら食べてあげてもいいわ。重たいドレスのせいで、お腹が空いちゃったもの!」

結局、優雅なレディへの道よりも、食欲への道の方がずっと近道だったようだ。

呪文

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