【マタタビ】14.ルースト005の大穴

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【マタタビ】13.メイドたちの決意
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 俺とシロは、ルースト005の入口に辿り着き、巨大な穴を覗いた。俺たちの足元には、構造支持も兼ねた巨大建造物群が立ち並び、数万人が生活する地下大都市の光景が広がっていた。この地下シェルターは、世界が終わる前、終末に備え文明保存のために構築されていたもので、ニューナゴヤ地表部に進出した者の多くはルースト005で終末を生き延びたらしい。今でも内部には多くの人々が行き交い、コミュニティを形成しているそうだ。居住空間がまだ離れているからか、人がいるとは思えないほど静かで、今はただ忘れ去られた文明の遺跡のようだった。

「すごいね、クロ。こんなに大きな街が地下にあるなんて」

 と、シロが感嘆の声を上げる。

「そうだな。だが、ここは油断できない。目立たないように行動するぞ」

 俺は、そう注意喚起した。

「シロ、メイドたちに貰った物を出してみろ」
「?」

 シロは、首を傾げる。どうやら忘れているようだ。失礼な奴だ。

「メイドたちが、初給料のお祝いにくれた物があっただろう」
「そういえば!」

 シロは、思い出してリュックサックから、ラッピングされた筒のような物を取り出した。開けてみると、中には大きな紙が入っていた。

「これは……ルースト005のマップか?」

 俺は、それを見て驚く。そこには、蟻の巣を思わせる巨大な迷路のようなマップが描かれていた。

「あのメイドたち、一体何者なんだ?」

 崩壊前に造られた地下シェルターの全体像を把握することなど、不可能だと思っていたが、それが今、目の前にある。メイドたちは、情報屋としてこのマップを手に入れたのだろうか。それともメイドたちの主がルースト005の建造に関わっていたのだろうか。

「何でこれを私にくれたんだろう?」

 シロは、マップを見ながら首を傾げる。

「真意は分からないが、俺たちに、星の樹に関する情報を持ち帰らせたいのかもしれないな……」

 そうでなければ、こんな貴重な情報を通りすがりの旅人に渡す意味が分からない。メイドたちについて気になることは多いが、今はルースト005の探索が先だ。俺は、気持ちを切り替えて、先に進む。

 俺とシロは、長い長い階段を、地下に向かって降りていく。暗く湿った階段を下りる俺たちの足音だけが、静寂を破る唯一の音だった。しばらく階段を降りると、錆びた鉄の扉があった。

「シロ、マップを見てくれ。入り口はここで合っているか?」

 シロは、携帯端末をポケットから取り出し、マップを開いて現在地を確認する。

「うん、多分、大丈夫……かもしれない」

 大丈夫じゃなさそうだ。

「マップを見せてみろ」

 俺は、地図が読めないシロの代わりに、マップを覗き込む。入口はここで間違いないようだ。だが、あれだけ長い階段を降りたというのに、現在地はまだマップの端の方だった。その先の、最深部に続くルートを見てげんなりする。

 俺たちは、鉄の扉を開け、マップを頼りに最深部を目指して地下大都市の通路を進んだ。通路は、薄暗くまるで巨大迷路のように入り組んでおり、マップがなければ、最悪遭難もあり得そうだ。改めてマップをくれたメイドたちに感謝した。

「何だか、迷路みたいで楽しい!」

 シロは、歩きながら呑気なことを言う。

「お前はいつもお気楽だな。怖くないのか?」
「クロがいるから、大丈夫」
「……そうか」

 猫である俺に寄せる信頼としては大きすぎる気もするが、頼られて悪い気はしない。俺は、引き続き周囲を警戒しながら、地下通路を進む。

 しばらく行くと、開けた空間に出た。天井からは人工の光が降り注ぎ、地下とは思えない明るさを保っていた。通路の両側には、住宅や店舗が立ち並んでおり、水路も通っている。どうやら、居住空間に出たようだ。

「クロ、誰かいるよ」
「ああ、気をつけろ」

 水路の側に、メガネをかけた少年が座っていた。茶色いキャスケットをかぶり、大きなリュックサックを脇に置いている。俺たちと同じ旅人だろうか。手元で携帯端末を操作していたが、こちらに気づいて顔を上げた。

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(次の話)
【マタタビ】15.黄昏梟との遭遇
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