あの日から80年・・・

私は名古屋市立高校に通う女子高生だ。２ヶ月前に急な発作により学校で倒れてそのまま入院、5日後に意識は戻ったものの記憶の混乱から、１ヶ月学校を休んでから復帰した。
記憶の混乱としているが、これは正しくない。それは私はその倒れた学生ではないからだ。
外見こそ変わらないが、私は80年前に生きていた者だ。そして駅の職員として働き、空襲で命を落とした・・・はずだったのだが、私の精神は何故かここにある。
昭和から令和の時代の女子高生に憑依してしまっていた。とても恥ずかしいが、死んだ時は30代の叔母ちゃんだった。
大曽根駅空襲で殉職した者の名簿を見ると、真に自分の名前があった。
本当に発作で倒れた女子高生にそのまま憑依してしまったらしい。その家族も親類も私には全く面識のない人たちだ
幸いなことに彼女の記憶や能力はそのままで、生活に多少支障はあったものの勉学にもついていけた。
ただ性格はどうしようもなく、以前の彼女は相当な我儘な子らしいが、私は凄い人見知りになので人が変わったようにおとなしい子になったと周りから言われた。
医師は頭を打った後遺症かもしれないとカウンセリングをしているが、恐らく事実を言ったら精神病院行だから黙って診察を受けている。
本当のところ、これからどうなるかは分からない。自分がそんなにこの世に未練があったようにも思えないのだ。
兎に角、今は頭を打って忘れたと言い訳しているスマホの習得に格闘しているところだ・・・。

※名古屋市内にあるJR大曽根駅の南口にひっそりと大戦中の慰霊碑がある。
　1945年の4月7日に旧国鉄大曽根駅南側の三菱発動機(現在の三菱電機)への空襲で、大曽根駅の駅員37名中30名が殉職した者への慰霊碑である。
　三菱発動機は当時の三菱製の零戦等のエンジン製造を行っている軍需工場で米軍の第一目標であった。
　その空襲の際、大曽根駅駅員が退避していた防空壕に不幸にも爆弾が直撃したのだった。
　殉職した駅員のうち、12名が女性であったと言われる。