趣味で書いてた小説の見せ場のシーン
使用したAI
ChatGPT
第十七話 万眼妃その1
水川の手の中には――一本の蝋燭。
迷いなく、
触手の上に、蝋燭を立てる。
そして、火を点けた。
ゆらり、と小さな炎が揺れた瞬間――
ミチミチ……
不快な音とともに、
切断された触手が内側から膨らみ始める。
肉が伸び、折り重なり、
まるでランタンの外殻のように蝋燭の炎を包み込んでいく。
色は、赤黒から――完全な黒へ。
さらに――
手足が、生えた。
短い腕。
短い脚。
二頭身ほどの小さな身体。
頭部は、
黒く変色したランタン。
その内側で、
水川の意志に反応するように、蝋燭の炎が揺れている。
静かに見つめる水川。
それは、
触手と水川の意志が混ざり合って生まれた、
擬似的な想霊体。
名を――
「鬼火(おにび)」
黒いランタンの頭を持つ小さな影が、
ぴょこん、と床の上で跳ねた。
生きた刃で“意志”を切り、
切られた意志を、“別の意志”として灯す。
水川の術は、
敵の肉体ではなく、意志そのものを改変する想霊術だった。
鬼火が、ふらりと前に進む。鬼火は、足元に落ちていた触手へとにじり寄る。
ランタンの下――身体に対して不釣り合いなほど横に裂けた巨大な口が開いた。
――ずるり。
自らの体積をはるかに超える量の肉を、鬼火は貪り始めた。
むしゃり、むしゃり、と音を立てて喰らいつく。
それに呼応するように、
頭部の蝋燭の炎が、さらに激しく、強く燃え上がる。
鬼火は走った。
炎を引きずるように加速し、
肉の柱の本体へ――そのまま大きく噛みついた。
――ぼっっ!!
噛みついた瞬間、炎が爆ぜるように膨張する。
鬼火は、想霊体の霊気を吸い取り、熱エネルギーへと変換し、それを“火”として燃焼させている。
次の瞬間。
鬼火の左隣で、小さな青い光球が眩く膨張した。
――詠士の《シャボン弾》。
霊気を込めたシャボン玉を、極限まで圧縮した一撃。
(……この想霊体は、今の僕が“言の葉”で鎮められレベルじゃない……)
詠士の胸に、焦りにも似た感情がよぎる。
(……でも、いつか――)
――ズドンッ!!
シャボン弾の爆発と同時に、
肉の柱の一部が内側から爆ぜ飛んだ。
鬼火、詠士の衝撃波。
両側から叩き込まれる猛攻に、肉の柱が不気味な軋み音をあげる。
ぐ、ぎ、ぎ、ぎ……!
(……もうすぐ、折れる!)
詠士がさらに攻撃を重ねる。
肉の柱の根元が、
まるで削られるように――徐々に、確実に細くなっていく。
無数の口たちが、一斉にざわめき始めた。
それは言葉ではない。
意味を持たない、感情だけの振動。
耳の奥を直接引き裂くような、不快な“音圧”。
「……っ!」
思わず、耳を塞ぎたくなるほどのそれを――
鬼火が、最後の一噛みで断ち切った。
――ズンッ!!
鈍く、腹に響く衝撃音。
肉の柱は、ついに地面へと倒れ落ちた。
その反動で、
天井が無理やり引き裂かれるようにきしみ――
ぱき、ぱき、と、無数の亀裂が走る。
(!!!)
四人は即座に距離を取った。
次の瞬間――
――どばっ!!
天井が、内側から引きちぎられるように崩れ落ちる。
瓦礫と共に、
天井にまで張り巡らされていた“肉の柱の一部”が、
まるで木の根を引きずり出すように、床へと降り注いだ。
ぐちゃり、
ぐちゃり、と、湿った音。
口。
口、口、口、口――
肉の残骸は天井から垂れ落ち、なおも微かに脈打っていた。
一際、大きな塊が――
天井から、叩きつけられるように落ちてきた。
(……あれが、本体……?)
凛が、思わず息を漏らす。
見つめた先に立っていたのは、
優に三メートルを超える異形の女。
その顔立ちは、あまりにも整いすぎていた。
鮮血のように赤い肌。
人の女性と見紛うほどに端正で、
それでいて、どこか現実離れした“作り物めいた美しさ”。
胴体は、メナシに似た異形の構造。
だが線はより細く、
胸元から腰にかけての輪郭には、
不気味なほどの女性的な曲線が宿っている。
細長い手足。
骨ばったのに、どこかしなやかな肢体。
そして――
異様に美しい指先。
凛は、吸い寄せられるように視線を滑らせ、
足元へと目を向けた。
その瞬間――
床一面に広がる、“目玉の川”が目に入った。
ごろり、
ごろごろり、と。
大小様々な目玉。
青、緑、黒、茶、金、濁った白――
無数の色を宿した瞳が、血と霊気に濡れながら流れている。
――今まで奪ってきた、すべての“目線”。
肉の柱の口々が、
まるで祝福するように――
一斉に、その名を呼んだ。
「――万眼妃(ばんがんき)」
その呼び声に応えるように、
核が、ゆっくりと顔を上げる。
閉ざされていた瞼が、
音もなく、ひらりと開いた。
宝石のように澄んだ、真紅の虹彩。
その奥に潜む、
血のように赤黒い、底なしの瞳孔。
あまりにも美しく、
あまりにも――“見てはいけない”眼。
誰もが、息を忘れた。
最初に動いたのは、凛だった。
ジャンパーの裾から、
**操霊布**が、
生き物のように跳ね上がる。
びゅるり、と宙を裂き、
万眼妃の――
足へ、胴体へ、そして顔へと、
一気に巻きついていった。
縛した瞬間――
残りの三人が、はっと我に返る。
戦闘の最中にもかかわらず、
見惚れて、完全に動きを止めていた。
万眼妃の視線は、
それほどまでに――
“奪う力”を持っていた。
凛が、咄嗟に三人へ指示を飛ばそうとして、
その口を、ぎり、と噛みしめた。
――喋れない。
肉の柱の能力は、未だ健在。
声を発した瞬間、目玉を奪われる。
悔しさに、凛の表情が歪む。
声なき戦場で、
視線だけが、恐怖を伝播していた。
青い閃光が走った。
詠士の――シャボン弾。
極限まで圧縮された霊気の塊が、
万眼妃の胸元へと直撃する。
だが――
ぱんっ、と虚しく弾けただけだった。
衝撃は霊気の膜に吸い殺され、
肉体の形が崩れることはない。
ただ、割れたシャボンの名残が、青い霧となって消えていく。
――効いていない。
次の瞬間。
サッ。
銀色の軌跡が、空を切った。
笠井の手に握られた医療用メス。
その刃が、万眼妃のふくらはぎを正確に捉える。
ピッ、と浅く走る切断音。
だが――
傷は、瞬時に塞がった。
肉が蠢き、血が逆流し、
まるで最初から切られていなかったかのように復元される。
――意志が、切れていない。
凛の操霊布が――
じゅわり、と赤く染まった。
万眼妃の肌に触れた部分から、
血とも霊気ともつかぬものが滲み出し、
布そのものを内側から腐食させていく。
ドロリッ――
嫌な音を立てて、操霊布が溶け落ちる。
拘束が、外れた。
その隙に――
ついに、万眼妃の完全な正面の瞳が露わになる。
見えた瞬間。
笠井、詠士、水川の三人が――
一斉に、動きを止めた。
まるで時間を奪われたかのように、
ただ、その場に立ち尽くす。
見惚れてしまった。
抗いようのないほどに、
**“視線を奪うためだけに生まれた美”**に。
万眼妃が、ゆっくりと詠士へ歩み寄る。
床に流れる無数の目玉が、
彼女の一歩ごとに、粘ついた音を立てて転がった。
細く、赤い腕が持ち上がる。
切先ように美しい指先が、詠士の喉元へと伸びていく。
凛の胸元が、ひくり、と跳ねた。
(まずい!)
この想霊体に触れられた瞬間、
何が起きるか、まったく予測がつかない。
凛は歯を食いしばり、
声を殺したまま、必死に打開策を探す。
そのとき――
ぴょん。
ジャンパーの内側から、
白い影がひとつ、跳び出した。
――モフ二等兵。
小さな体で床に着地し、
青く光る瞳で万眼妃を、じっと見据える。
凛の中で、
僅かにだが――確かな希望が灯った。
水川の手の中には――一本の蝋燭。
迷いなく、
触手の上に、蝋燭を立てる。
そして、火を点けた。
ゆらり、と小さな炎が揺れた瞬間――
ミチミチ……
不快な音とともに、
切断された触手が内側から膨らみ始める。
肉が伸び、折り重なり、
まるでランタンの外殻のように蝋燭の炎を包み込んでいく。
色は、赤黒から――完全な黒へ。
さらに――
手足が、生えた。
短い腕。
短い脚。
二頭身ほどの小さな身体。
頭部は、
黒く変色したランタン。
その内側で、
水川の意志に反応するように、蝋燭の炎が揺れている。
静かに見つめる水川。
それは、
触手と水川の意志が混ざり合って生まれた、
擬似的な想霊体。
名を――
「鬼火(おにび)」
黒いランタンの頭を持つ小さな影が、
ぴょこん、と床の上で跳ねた。
生きた刃で“意志”を切り、
切られた意志を、“別の意志”として灯す。
水川の術は、
敵の肉体ではなく、意志そのものを改変する想霊術だった。
鬼火が、ふらりと前に進む。鬼火は、足元に落ちていた触手へとにじり寄る。
ランタンの下――身体に対して不釣り合いなほど横に裂けた巨大な口が開いた。
――ずるり。
自らの体積をはるかに超える量の肉を、鬼火は貪り始めた。
むしゃり、むしゃり、と音を立てて喰らいつく。
それに呼応するように、
頭部の蝋燭の炎が、さらに激しく、強く燃え上がる。
鬼火は走った。
炎を引きずるように加速し、
肉の柱の本体へ――そのまま大きく噛みついた。
――ぼっっ!!
噛みついた瞬間、炎が爆ぜるように膨張する。
鬼火は、想霊体の霊気を吸い取り、熱エネルギーへと変換し、それを“火”として燃焼させている。
次の瞬間。
鬼火の左隣で、小さな青い光球が眩く膨張した。
――詠士の《シャボン弾》。
霊気を込めたシャボン玉を、極限まで圧縮した一撃。
(……この想霊体は、今の僕が“言の葉”で鎮められレベルじゃない……)
詠士の胸に、焦りにも似た感情がよぎる。
(……でも、いつか――)
――ズドンッ!!
シャボン弾の爆発と同時に、
肉の柱の一部が内側から爆ぜ飛んだ。
鬼火、詠士の衝撃波。
両側から叩き込まれる猛攻に、肉の柱が不気味な軋み音をあげる。
ぐ、ぎ、ぎ、ぎ……!
(……もうすぐ、折れる!)
詠士がさらに攻撃を重ねる。
肉の柱の根元が、
まるで削られるように――徐々に、確実に細くなっていく。
無数の口たちが、一斉にざわめき始めた。
それは言葉ではない。
意味を持たない、感情だけの振動。
耳の奥を直接引き裂くような、不快な“音圧”。
「……っ!」
思わず、耳を塞ぎたくなるほどのそれを――
鬼火が、最後の一噛みで断ち切った。
――ズンッ!!
鈍く、腹に響く衝撃音。
肉の柱は、ついに地面へと倒れ落ちた。
その反動で、
天井が無理やり引き裂かれるようにきしみ――
ぱき、ぱき、と、無数の亀裂が走る。
(!!!)
四人は即座に距離を取った。
次の瞬間――
――どばっ!!
天井が、内側から引きちぎられるように崩れ落ちる。
瓦礫と共に、
天井にまで張り巡らされていた“肉の柱の一部”が、
まるで木の根を引きずり出すように、床へと降り注いだ。
ぐちゃり、
ぐちゃり、と、湿った音。
口。
口、口、口、口――
肉の残骸は天井から垂れ落ち、なおも微かに脈打っていた。
一際、大きな塊が――
天井から、叩きつけられるように落ちてきた。
(……あれが、本体……?)
凛が、思わず息を漏らす。
見つめた先に立っていたのは、
優に三メートルを超える異形の女。
その顔立ちは、あまりにも整いすぎていた。
鮮血のように赤い肌。
人の女性と見紛うほどに端正で、
それでいて、どこか現実離れした“作り物めいた美しさ”。
胴体は、メナシに似た異形の構造。
だが線はより細く、
胸元から腰にかけての輪郭には、
不気味なほどの女性的な曲線が宿っている。
細長い手足。
骨ばったのに、どこかしなやかな肢体。
そして――
異様に美しい指先。
凛は、吸い寄せられるように視線を滑らせ、
足元へと目を向けた。
その瞬間――
床一面に広がる、“目玉の川”が目に入った。
ごろり、
ごろごろり、と。
大小様々な目玉。
青、緑、黒、茶、金、濁った白――
無数の色を宿した瞳が、血と霊気に濡れながら流れている。
――今まで奪ってきた、すべての“目線”。
肉の柱の口々が、
まるで祝福するように――
一斉に、その名を呼んだ。
「――万眼妃(ばんがんき)」
その呼び声に応えるように、
核が、ゆっくりと顔を上げる。
閉ざされていた瞼が、
音もなく、ひらりと開いた。
宝石のように澄んだ、真紅の虹彩。
その奥に潜む、
血のように赤黒い、底なしの瞳孔。
あまりにも美しく、
あまりにも――“見てはいけない”眼。
誰もが、息を忘れた。
最初に動いたのは、凛だった。
ジャンパーの裾から、
**操霊布**が、
生き物のように跳ね上がる。
びゅるり、と宙を裂き、
万眼妃の――
足へ、胴体へ、そして顔へと、
一気に巻きついていった。
縛した瞬間――
残りの三人が、はっと我に返る。
戦闘の最中にもかかわらず、
見惚れて、完全に動きを止めていた。
万眼妃の視線は、
それほどまでに――
“奪う力”を持っていた。
凛が、咄嗟に三人へ指示を飛ばそうとして、
その口を、ぎり、と噛みしめた。
――喋れない。
肉の柱の能力は、未だ健在。
声を発した瞬間、目玉を奪われる。
悔しさに、凛の表情が歪む。
声なき戦場で、
視線だけが、恐怖を伝播していた。
青い閃光が走った。
詠士の――シャボン弾。
極限まで圧縮された霊気の塊が、
万眼妃の胸元へと直撃する。
だが――
ぱんっ、と虚しく弾けただけだった。
衝撃は霊気の膜に吸い殺され、
肉体の形が崩れることはない。
ただ、割れたシャボンの名残が、青い霧となって消えていく。
――効いていない。
次の瞬間。
サッ。
銀色の軌跡が、空を切った。
笠井の手に握られた医療用メス。
その刃が、万眼妃のふくらはぎを正確に捉える。
ピッ、と浅く走る切断音。
だが――
傷は、瞬時に塞がった。
肉が蠢き、血が逆流し、
まるで最初から切られていなかったかのように復元される。
――意志が、切れていない。
凛の操霊布が――
じゅわり、と赤く染まった。
万眼妃の肌に触れた部分から、
血とも霊気ともつかぬものが滲み出し、
布そのものを内側から腐食させていく。
ドロリッ――
嫌な音を立てて、操霊布が溶け落ちる。
拘束が、外れた。
その隙に――
ついに、万眼妃の完全な正面の瞳が露わになる。
見えた瞬間。
笠井、詠士、水川の三人が――
一斉に、動きを止めた。
まるで時間を奪われたかのように、
ただ、その場に立ち尽くす。
見惚れてしまった。
抗いようのないほどに、
**“視線を奪うためだけに生まれた美”**に。
万眼妃が、ゆっくりと詠士へ歩み寄る。
床に流れる無数の目玉が、
彼女の一歩ごとに、粘ついた音を立てて転がった。
細く、赤い腕が持ち上がる。
切先ように美しい指先が、詠士の喉元へと伸びていく。
凛の胸元が、ひくり、と跳ねた。
(まずい!)
この想霊体に触れられた瞬間、
何が起きるか、まったく予測がつかない。
凛は歯を食いしばり、
声を殺したまま、必死に打開策を探す。
そのとき――
ぴょん。
ジャンパーの内側から、
白い影がひとつ、跳び出した。
――モフ二等兵。
小さな体で床に着地し、
青く光る瞳で万眼妃を、じっと見据える。
凛の中で、
僅かにだが――確かな希望が灯った。
呪文
入力なし